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STRATEGY — 2026.10.01

【介護】【KPI管理】介護・医療のKPIツリー経営|稼働率と人員を整える方法

こんにちは、ストラテジーデザインの吉田です。
今日の記事は、介護事業所・クリニック・歯科が、稼働率、人員配置、記録業務、加算要件を一つの数字の流れで管理するKPIツリー経営について解説します。

介護事業所では利用者数、クリニックでは来院数、歯科では予約数を見ていても、利益や現場の余裕につながらないことがあります。
数字を確認しているのに、何から手を付けるべきか決まらない状態です。

背景には、稼働率、人員配置、記録、加算、採用を別々の問題として扱う構造があります。
この記事では、それらをつなぐKPIツリーを使い、従業員5〜200名規模でも回せる目標管理の作り方を紹介します。

大がかりなシステム導入は前提にしません。
まずは既存のシフト表、予約台帳、請求データ、日報から取れる数字で、毎週の判断を変える方法を解説します。

この記事の要点

KPIツリーとは、最終目標を達成するための要因を分解し、日々・週次で確認する指標につなげる管理手法のことです。介護・医療では、稼働率や収入だけでなく、人員、記録、利用者・患者の継続を因果関係で整理します。

  • 介護・医療のKPI管理は、売上だけを追うのではなく、稼働率・人員・記録品質を一つの流れとして管理することが重要です。
  • 中小規模の事業所では、KPIを増やし過ぎず、経営目標から逆算した週次指標を3〜6個に絞る方法が実行しやすいです。
  • 稼働率が低い原因は紹介不足とは限らず、受入可能枠、人員配置、初回対応、記録負担を分けて確認する必要があります。
  • 10月の最低賃金改定期は、人件費だけでなく採用・定着・業務時間を同時に見直すKPIツリーを作る好機です。

介護・医療のKPI管理は稼働率だけで決めない

介護・医療のKPI管理は稼働率だけで決めない

介護・医療の経営で稼働率は重要な数字です。
しかし、稼働率だけを目標にすると、現場の負担や記録の遅れを見落としやすくなります。
利用者・患者を増やせても、必要な人員を確保できなければ、サービス品質と定着に影響します。

介護・医療のKPI管理は、収入を生む量と、安全に提供できる体制を同時に確認する仕組みです。
たとえば通所介護なら、利用定員に対する利用実績だけでなく、欠席、振替、送迎、人員、記録完了までを見ます。
クリニックや歯科でも、予約枠、来院、キャンセル、診療後の会計・記録をつなげて確認します。

まず、最終目標を一つだけ決めます。
利益額を置ければ理想ですが、月次で把握しにくい場合は、事業所単位の「安定して必要な体制を維持できる収入」を仮の目標にしても構いません。
目標は、現場を追い込むためではなく、優先順位を決める基準です。

目標の下に、次の3つの枝を置くと整理しやすくなります。

ここでいう加算は、一定の体制や取り組みに対して認められる報酬上の評価です。
対象サービスや要件は制度改定で変わり得るため、算定可否は必ず最新の公募資料、通知、指定権者などで確認してください。

「数字を増やすと管理できない」と感じる場合は、最初から全項目を追わないことが大切です。
経営者が毎週見る数字は3〜6個で十分です。
細かな明細は、問題が起きたときに担当者が確認する二層構造にします。

たとえば、定員20名程度の通所介護なら、週平均利用人数、欠席率、必要シフト充足率、記録の期限内完了率、請求前の確認件数を候補にできます。
クリニックなら、予約枠消化率、初診から再診への移行、当日キャンセル、診療終了後の記録滞留を候補にします。
自社の業態に合わせて、判断に使う数字だけを残してください。

KPIツリーの作り方|経営目標を現場の行動へ分ける

KPIツリーの作り方|経営目標を現場の行動へ分ける

KPIツリーは、経営目標を現場の行動にまで分解するための道具です。
数字を監視する表ではなく、「今週は誰が何を変えるか」を決めるために使います。

KPIツリーは、最終目標から逆算し、担当者が動かせる数字まで分解して初めて機能します。
売上や収入だけを掲げても、現場スタッフは具体的な行動を選びにくいからです。
分解の深さは、担当者が一週間以内に改善を試せる地点までで止めます。

作成は、ホワイトボードや表計算ソフトで十分です。
次の順番で一度書き出してください。

たとえば、訪問介護で「稼働が上がらない」とき、単に新規利用者を増やすだけでは解決しない場合があります。
サービス提供責任者の調整時間が不足している、訪問枠が地域ごとに分散している、ヘルパーの勤務可能時間と依頼時間が合わない、といった要因が隠れます。

この場合のKPIツリーでは、稼働を「提供時間」と「提供可能時間」に分けます。
さらに提供可能時間を、登録スタッフの勤務可能時間、移動時間、研修・会議、急な欠勤に分けます。
すると、採用を急ぐ前に、訪問エリアの組み替えや時間帯別の受入基準を見直す判断ができます。

クリニックでは、来院数を「予約枠数×予約充足率×来院率」と考える方法があります。
ただし、診療の質を数式だけで扱うことはできません。
診療時間が長引く理由、患者への説明時間、急患対応も併せて確認します。
予約枠を増やすことが、常に正しい解決策ではありません。

歯科では、定期管理の次回予約率、キャンセル後の再予約、治療中断を分けて見ると、患者との接点で改善点を探しやすくなります。
受付だけに負担を集めず、診療室での説明や次回提案も含めて役割を決めることが重要です。

稼働率・人員配置・記録をつなぐ数字の見方

稼働率・人員配置・記録をつなぐ数字の見方

稼働率を上げようとして現場が疲弊する場合、受入件数と提供能力のつながりが見えていないことがあります。
介護・医療では、人員配置と記録業務がサービス提供の土台です。
数字を別々に眺めるのではなく、時間の使われ方としてつなげて確認します。

稼働率の改善は、受入枠を増やす前に、既存の受入枠がなぜ埋まらないかを確認することから始めます。
たとえば通所介護なら、曜日別の空き、欠席の発生、振替の可否、送迎ルート、人員基準を確認します。
全体平均が低くても、特定曜日だけが空いているケースは少なくありません。

週次会議では、次のように数字を並べます。
数字そのものよりも、前週との差と理由を短く残すことが大切です。

記録が滞留すると、請求作業の負荷が月末に集中します。
さらに、加算の確認、情報共有、事故・苦情への対応も後追いになりやすくなります。
そのため、記録は単なる事務作業ではなく、稼働と収入を支える先行指標として扱います。

先行指標とは、将来の結果に影響する途中の数字です。
たとえば月末の請求額は結果指標ですが、毎日の記録完了率や週次の予約消化率は、途中で手を打てる先行指標です。
経営者は結果だけで評価せず、先行指標の異常を早く拾う役割を担います。

改善策も、原因に対応させます。
記録の遅れが特定職種に集中するなら、個人の努力不足と決めつけず、記録様式、入力端末、申し送り、担当件数を確認します。
テンプレート化、音声入力、入力場所の見直しなど、業務設計で減らせる負担もあります。

ただし、個人情報を扱うAIやクラウドサービスの利用には注意が必要です。
利用者・患者情報を外部サービスへ入力する場合は、契約内容、権限設定、院内・事業所内の規程、情報管理責任者の確認を先に行ってください。

最低賃金改定期に見直す採用・定着のKPI

最低賃金改定期に見直す採用・定着のKPI

10月は最低賃金改定の影響を給与計算や採用条件へ反映する時期です。
介護・医療では人件費の比重が大きいため、時給の見直しだけで終えると、採用難や残業増加への対策が後回しになります。

最低賃金改定期は、人件費を削る時期ではなく、一人当たりの業務負荷と定着条件を点検する時期です。
賃金改定の適用時期や対象範囲は都道府県・雇用形態などで異なるため、必ず最新の行政情報、雇用契約、給与計算の専門家への確認を行ってください。

KPIツリーでは、人件費を「金額」だけでなく、「必要な勤務時間を安定して確保できているか」という視点で扱います。
採用人数を目標に置くだけでは、早期離職や教育負担が見えません。

採用・定着の枝には、次のような項目を置けます。

特に小規模事業所では、一人の退職がシフト全体に影響します。
だからこそ、離職後に求人を出すだけではなく、欠勤や残業の増加、面談で出る不満、教育担当への負荷などを早期の兆候として確認します。
面談の内容は評価材料ではなく、業務を変える材料として扱う姿勢が必要です。

たとえば、採用したスタッフが定着しない場合、給与水準だけが原因とは限りません。
初日の案内が曖昧、教育担当が固定で疲弊している、記録手順が人によって違う、相談相手がいないなど、組織設計に原因があることもあります。

対策は、一度に制度化しなくても進められます。
初日から30日までの確認項目を一枚にまとめる、週1回15分の振り返りを設ける、質問を手順書へ追記する担当を決める、といった小さな運用から始めてください。
採用費を増やす前に、定着を支える日常業務を整えるほうが、効果を検証しやすい場合があります。

介護・医療のKPIツリーを週次運営に定着させる

介護・医療のKPIツリーを週次運営に定着させる

KPIツリーは、作成しただけでは経営改善につながりません。
毎週の会議で数字を見て、原因を仮説にし、担当と期限を決めることで初めて役立ちます。
会議時間は長くする必要がなく、15〜30分でも運用できます。

中小規模の介護・医療事業所では、週次会議で一つの異常と一つの改善行動を決める運営が続きやすいです。
数字の報告会にすると、参加者は受け身になりやすくなります。
数字を見て意思決定する場だと明確にしてください。

週次会議は、次の流れで進めます。

例として、通所介護で月曜日の稼働が低いなら、営業を増やす前に、月曜日の欠席理由、振替希望、送迎の制約、家族の都合、受入体制を確認します。
原因が振替の案内不足なら、欠席連絡を受けた時点の案内手順を変えることが次の行動になります。

クリニックで当日キャンセルが増えた場合も同じです。
患者属性を決めつけず、予約取得から前日確認までの流れ、予約時間帯、急な診療変更への対応を見ます。
連絡手段を変える場合は、患者の同意、個人情報の扱い、スタッフの対応負荷も確認します。

KPIツリーは半年ごとに見直してください。
事業所の重点は、新規開設期、安定運営期、人員不足期で変わります。
10月から下期を始めるなら、まずは12月末までの3か月を試行期間に設定し、毎週の数字と現場の声を残す方法が現実的です。

最初の目的は、立派な経営資料を作ることではありません。
経営者、管理者、現場が同じ問題を同じ順番で話せる状態を作ることです。
数字を共通言語にできれば、限られた人員と時間でも、改善の優先順位を合わせやすくなります。

よくある質問

Q. 介護事業所はKPIを何個に絞るべきですか?

最初は3〜6個に絞るのが現実的です。
稼働、人員、記録、継続の各領域から、毎週確認して行動を変えられる数字を一つずつ選びます。
項目数よりも、確認担当と改善行動が決まっていることを優先してください。

Q. クリニックのKPI管理は売上だけで十分ですか?

売上だけでは十分ではありません。
売上は結果であり、予約枠の消化、来院率、キャンセル、記録滞留、スタッフの勤務負荷などを併せて見る必要があります。
結果が下がってから慌てないために、途中の先行指標を週次で確認します。

Q. 歯科医院で最初に見るべきKPIは何ですか?

歯科医院では、予約枠消化率、当日キャンセル、次回予約率の三つから始める方法が有効です。
どの数字を選ぶ場合も、診療品質や患者説明の時間を犠牲にしないことが前提です。
数字の変化が出た理由を受付と診療室で共有してください。

Q. 人手不足の介護事業所でもKPI管理はできますか?

人手不足の事業所ほど、少ないKPIで始めることができます。
複雑な集計や専用システムは必須ではありません。
シフト表、利用実績、記録の完了状況から、残業や欠勤につながる兆候を一つずつ把握する運用から始めてください。

Q. 加算管理をKPIに入れるときの注意点は何ですか?

加算管理では、算定件数より要件確認と記録の期限管理をKPIに置くことが重要です。
要件を満たさない算定は避ける必要があります。
対象サービスや制度ごとに扱いが異なるため、最新の通知、公募要領、指定権者の案内を必ず確認してください。

中小企業が明日から取り組めること

  • 直近4週間の利用・来院実績を曜日別に並べ、全体平均では見えない空き枠を一つ見つけます。
  • 管理者会議で、稼働・人員・記録から毎週見る数字を一つずつ選び、合計6個以内に絞ります。
  • 記録が翌日に持ち越される件数を一週間だけ数え、職種別ではなく工程別に滞留箇所を確認します。
  • 採用後30日間の教育手順を時系列で書き出し、担当者しか説明できない作業を一つ標準化します。
  • 週次会議の最後に、担当者・期限・確認する数字を一行で残し、翌週の冒頭で必ず検証します。

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この記事を書いた人

吉田 光広

吉田 光広 / 代表取締役CEO ストラテジーデザイン株式会社

1997年からITの最前線に立ち、ゲーム開発を経てWeb・システム開発の会社経営を20年以上継続。 現在はAIコンサルタントとして上場企業への講師登壇や高校生向けAI教育を担当し、 ITプロ育成スクール「PROCLASS」代表も兼務。中小企業のAI・DX導入を現場で支援している。

著書:泥臭いAI ― リアルビジネスをAIでハックする/AIを雇う技術 ― 100人の天才を部下にする仕事術/AI×教育の実践ガイド ― 問いを立てる力を育てる

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