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STRATEGY — 2026.09.17

【IT業】【目標管理】IT企業のOKRとは|単価・採用・AI活用をつなぐ目標管理

こんにちは、ストラテジーデザインの吉田です。
今日の記事は、受託開発・SaaS・保守を手がける中小IT企業が、OKRを使って単価向上、人材採用、AI活用を一つの方針にまとめる方法を解説します。

下期が始まる時期は、IT企業にとって案件の進捗、採用計画、展示会後の商談、年末までの売上見込みを見直す時期です。
しかし、営業は案件獲得、開発は納期、管理部門は採用とコストを追い、それぞれが正しい仕事をしていても力が分散しがちです。

特に受託開発や保守が中心の会社では、目の前の案件対応が優先されます。
その結果、単価を上げる提案の準備、SaaSの継続率改善、AIによる業務設計が後回しになります。
そこで役立つのが、経営課題と日々の行動を結び直すOKRです。

この記事では、従業員5〜200名規模のIT企業が、下期の重点施策を一つに絞り、無理なくOKRを運用する方法を説明します。

この記事の要点

OKRとは、組織が実現したい定性的な目標と、その達成度を測る数値の成果指標をセットで管理する目標管理の方法です。Objectiveは目標、Key Resultsは目標が達成されたと判断するための主要な成果を指します。

  • 中小IT企業のOKRは、全社で多数の目標を追うのではなく、下期に変えたい経営課題を一つ選んで始める方法が現実的です。
  • 単価向上のOKRは、見積額だけでなく、提案対象の選定、商談化、契約後の粗利確認までを成果指標に置くと機能します。
  • AI活用の目標は、利用回数ではなく、削減した工数を顧客提案や品質確認へ振り向けられたかで評価するべきです。
  • OKRは人事評価の点数表ではなく、部署をまたぐ優先順位をそろえ、週次で仮説を修正するための経営の道具です。

IT企業のOKRは施策を減らすために使う

IT企業のOKRは施策を減らすために使う

中小IT企業のOKRは、目標を増やす仕組みではなく、今期にやらないことを決める仕組みです。

受託開発、保守、SaaSを並行している会社では、改善テーマが自然に増えます。
採用、教育、生成AI、展示会、既存顧客への提案、セキュリティ対応は、いずれも必要です。
ただし、同じ四半期にすべてを重点施策にはできません。

OKRでは、まず会社として実現したい状態をObjectiveに置きます。
次に、その状態が起きたと判断できる2〜4個の成果をKey Resultsに置きます。
売上や作業量だけでなく、顧客価値と利益につながる変化を選ぶことが重要です。

例えば「AIを使える会社になる」はOKRとして弱い表現です。
何を変えるのか、誰にどんな価値を出すのかが見えないためです。
一方で「保守顧客が改善相談をしやすい体制をつくる」は、営業、保守、開発の行動につながります。

下期の最初に、経営者と部門責任者で次の三点を書き出してください。

Objectiveは、通常一つで十分です。
複数事業がある場合も、会社全体のOKRを増やすより、事業ごとに補助的な管理表を持つほうが運用しやすくなります。

OKRは壮大な変革計画である必要はありません。
従業員20名の会社なら、経営者、営業責任者、開発責任者の3人が30分で話せる粒度から始められます。
大切なのは、各人の仕事を増やさず、優先順位を同じ方向へ向けることです。

OKRの作り方|単価向上を成果で管理する

OKRの作り方|単価向上を成果で管理する

IT企業の単価向上は、値上げ通知だけで実現するものではありません。
単価向上は、顧客が追加で払う理由を提案工程に組み込む仕事です。

受託開発では、要件が曖昧なまま見積もりを急ぎ、価格だけで比較されることがあります。
保守では、毎月の問い合わせ対応に追われ、改善提案を有償サービスに変える機会を逃しやすいです。
SaaSでも、契約継続だけを追うと利用部門の成果が見えなくなります。

そこで、単価向上をテーマにしたOKRは、受注額だけをKey Resultsにしません。
受注額は景気や検収時期にも左右されるためです。
提案の質と案件構造が変わったかを確認できる指標を組み合わせます。

例として、下期のObjectiveを「顧客の業務成果に基づき、適正な対価を得られる提案体制をつくる」と置きます。
この場合のKey Resultsは、次のように設定できます。

数値目標は、自社の過去3〜6か月の実績から決めます。
例えば、商談が月に数件しかない会社が急に数十件を求めると、数字合わせの面談になりかねません。
まずは「現状より一件多く」「全案件で実施」といった、行動の質が変わる水準を置くほうが有効です。

単価交渉そのものは営業だけの仕事ではありません。
開発者が要件の曖昧さを記録し、保守担当が繰り返し起きる相談を分類し、経営者が値付けの基準を決める必要があります。
OKRは、この分業を一つの成果に接続するために使えます。

AI活用のOKRは削減時間の使い道まで決める

AI活用のOKRは削減時間の使い道まで決める

生成AIを導入しても、仕事が楽になった実感だけでは経営改善につながりません。
AI活用の成果は、減らした作業時間を何の価値づくりへ振り向いたかで判断します。

IT企業では、議事録の要約、仕様書のたたき台、テストケース作成、問い合わせ分類、ソースコードの補助などにAIを使う動きが広がっています。
一方で、入力情報の取り扱い、出力内容の確認、顧客との契約条件には注意が必要です。

AI活用をOKRにする際は、「全社員が使う」「毎日使う」といった利用量を目的にしないでください。
利用を強制すると、品質確認が浅くなったり、効果の薄い業務にも使ったりする恐れがあります。
対象業務を絞り、前後の工数と品質を比較する設計が必要です。

受託開発会社であれば、次のようなObjectiveが考えられます。
「定型作業を減らし、顧客理解と品質確認に時間を使える開発体制をつくる」です。

Key Resultsの候補は、以下のように設定します。

顧客情報やソースコードを外部サービスに入力する場合は、利用規約、契約、セキュリティ方針を確認してください。
入力してよい情報の範囲を決めずに現場任せにすると、便利さよりも管理上の負担が大きくなります。

AIは人員不足を一気に解消する道具ではありません。
しかし、経験者しかできなかった下準備を標準化し、若手の確認作業を支える可能性はあります。
まずは一業務、一チーム、一か月の検証から始めると、次の投資判断に必要な材料が集まります。

中小IT企業のOKRを週次会議で回す方法

中小IT企業のOKRを週次会議で回す方法

OKRは、月末に数字を確認するだけでは機能しません。
中小IT企業のOKRは、週次で障害を共有し、次の一手を決める運用が基本です。

受託案件が多い会社では、週ごとに優先順位が変わります。
急な障害対応、顧客からの追加要望、退職や採用の遅れが起きるためです。
計画が崩れること自体を問題にするより、崩れた理由を早くつかみ、目標への影響を判断することが重要です。

週次会議は、30分から45分で構いません。
経営者だけが話す場ではなく、営業、開発、保守の責任者が事実を持ち寄る場にします。
会議資料を凝ったものにせず、同じ管理表を画面共有できれば十分です。

会議では、次の順番で確認してください。

例えば、改善提案の商談が増えない場合、営業担当の行動量だけを責めても解決しません。
保守担当が顧客課題を記録できていない、提案資料がない、誰に決裁権があるか不明といった原因が考えられます。
会議では「次週までに重点顧客三社の相談履歴を整理する」のように、次の作業を小さく決めます。

OKRを人事評価と直結させる場合は慎重さが必要です。
未達成を個人の減点にすると、挑戦的な目標ではなく、達成しやすい数字だけが選ばれます。
まずは経営会議や部門横断会議の共通言語として使い、運用が安定してから評価制度との関係を検討するほうが安全です。

下期にOKRを定着させる90日間の実行手順

下期にOKRを定着させる90日間の実行手順

下期のOKRは、完成度の高い計画書を作るより、90日間で一度回し切ることが大切です。
最初の90日で得るべき成果は、目標の達成そのものより、目標を動かす条件を把握することです。

9月は、年末までの案件見込みを整理し、秋の展示会や既存顧客への提案を設計しやすい時期です。
展示会に出る企業であれば、名刺獲得数だけでなく、どの業種のどの課題を持つ見込み客と話すかをOKRに結びつけてください。
商談後の提案体制まで準備しておく必要があります。

最初の30日では、経営者がObjectiveを一つに絞ります。
次の30日では、各Key Resultsの障害を取り除く小さな改善を実行します。
最後の30日では、数字だけでなく、続ける施策と止める施策を決めます。

90日間の進め方は、以下の通りです。

採用が課題の会社では、採用だけを独立したOKRにする前に、受注案件の質と育成余力を確認してください。
高難度の案件を低価格で受け続ける状態では、採用人数を増やしても定着や収益の問題が残ります。
単価、標準化、AI活用、採用を同じ経営構造の中で見ることが必要です。

OKRは、会社を急に変える万能な手法ではありません。
それでも、日々の案件対応に埋もれがちな経営判断を見える形にします。
下期の最初に一つの目標を定め、毎週一つの障害を取り除く運用から始めてください。

よくある質問

Q. 中小IT企業でもOKRは導入できますか?

はい、従業員5名程度のIT企業でも導入できます。
最初から全社員の個人OKRを作る必要はありません。
経営者と責任者が共有する全社Objectiveを一つ置き、成果指標を2〜4個に絞る形なら、既存の週次会議で運用できます。

Q. OKRとKPIは何が違いますか?

OKRは目指す変化と成果を示し、KPIは日常業務の状態を継続して測る指標です。
例えば「顧客成果に基づく提案体制をつくる」がOKRで、提案商談数や見積粗利率はKPIとして使えます。
両者を対立させず、目的と日常管理で使い分けます。

Q. IT企業のOKRは何個までに絞るべきですか?

最初の全社OKRは一つに絞るべきです。
中小IT企業は案件対応や兼務が多いため、複数の重点目標を置くと通常業務との優先順位が曖昧になります。
一つのObjectiveに対して、Key Resultsを2〜4個にする構成が運用しやすいです。

Q. AI活用をOKRにするときの注意点は?

AIの利用回数を成果にしないことが最大の注意点です。
対象業務を絞り、利用前後の工数、手戻り、品質確認の負荷を比較してください。
また、顧客情報やコードを扱う場合は、契約条件、社内規程、利用サービスの設定を事前に確認する必要があります。

Q. OKRを人事評価に使ってもよいですか?

導入直後のOKRを人事評価へ直接使うことは推奨しません。
未達が減点につながると、社員は挑戦的な目標を避けやすくなります。
まずは部門横断の優先順位をそろえるために運用し、目標設定と振り返りの質が安定してから制度との関係を検討してください。

中小企業が明日から取り組めること

  • 経営者と責任者で30分集まり、下期に最も変えたい経営課題を一文で書き出してください。
  • 単価、採用、AI活用の施策を並べ、今四半期に止めても影響が小さい施策を一つ決めてください。
  • 重点顧客三社について、現場が困っている業務と追加提案の余地を営業と保守で確認してください。
  • AIを試す業務を二つまでに絞り、作業時間、確認時間、手戻りを利用前から記録してください。
  • 既存の週次会議に15分追加し、OKRの差分、障害、今週の担当行動だけを確認してください。

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この記事を書いた人

吉田 光広 / 代表取締役CEO ストラテジーデザイン株式会社

1997年からITの最前線に立ち、ゲーム開発を経てWeb・システム開発の会社経営を20年以上継続。 現在はAIコンサルタントとして上場企業への講師登壇や高校生向けAI教育を担当し、 ITプロ育成スクール「PROCLASS」代表も兼務。中小企業のAI・DX導入を現場で支援している。

著書:泥臭いAI ― リアルビジネスをAIでハックする/AIを雇う技術 ― 100人の天才を部下にする仕事術/AI×教育の実践ガイド ― 問いを立てる力を育てる

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