【介護】【防災BCP】介護・医療の防災BCP|下期に整える記録・連絡・人員配置
こんにちは、ストラテジーデザインの吉田です。
今日の記事は、下期が始まる9月に、介護事業所・クリニック・歯科が防災BCPを現場で動く形に整える実務を解説します。
9月は防災を見直しやすい時期です。
下期の計画を立てる時期でもあり、年末年始の休業体制や冬の感染症流行も視野に入れられます。
介護事業所、クリニック、歯科医院では、災害時にも利用者・患者への対応を止めにくい体制が求められます。
ただし、小規模な事業所が分厚い計画書を作っても、現場で開けなければ役に立ちません。
この記事では、従業員5〜200名規模の事業所が、記録、連絡、人員、備蓄を順番に整える方法を説明します。
制度上の詳細な要件は変更されることがあるため、最新の公募要領や行政機関の案内を必ず確認してください。
この記事の要点
防災BCPとは、災害や停電などが起きても、優先度の高い業務を続け、早期に通常運営へ戻すための事業継続計画のことです。介護・医療では、利用者や患者の安全確保と必要なケアの継続を具体化します。
- 介護・医療の防災BCPは、立派な計画書を作ることより、災害発生後の最初の60分に誰が何をするかを決めることが重要です。
- 記録業務の防災対策は、紙かクラウドかの二者択一ではなく、必要情報を停電時にも確認できる形で二重化する方法が現実的です。
- 災害時の人員配置は全職員を呼び出す前提ではなく、出勤可能者だけで維持する優先業務と縮小基準を先に決めます。
- 秋の防災訓練は避難だけで終えず、安否確認、家族連絡、記録閲覧、引き継ぎまで通して試すとBCPの弱点を見つけやすくなります。
介護・医療の防災BCPは9月に何を見直すべきか

介護・医療の防災BCPは、災害時に普段どおりのサービスを守る計画ではなく、限られた人員と設備で優先業務を続けるための運営手順です。
下期が始まる9月は、上期に起きた欠勤、連絡漏れ、機器不具合を振り返り、年末年始までの改善予定に落とし込むのに向いています。
介護では、利用者の安否確認、服薬や食事、排せつ支援、医療的ケアなどが優先候補になります。
通所系サービスなら送迎の中止判断、訪問系サービスなら訪問優先順位も必要です。
クリニックや歯科医院では、診療継続の可否、予約患者への連絡、医療材料や薬剤の保全を整理します。
最初に、責任者だけで計画を作り込む必要はありません。
管理者、現場責任者、事務担当者が30分集まり、前回の訓練や実際のトラブルを振り返るところから始めます。
議論する項目は、次の4つに絞ると進みます。
- 災害発生後の最初の60分に確認する利用者・患者・職員の情報
- 停電、断水、通信障害が起きた場合に止める業務と続ける業務
- 出勤できる職員が半数以下になった場合の勤務体制と判断者
- 家族、連携先、行政、取引先へ連絡する順番と連絡手段
ここで重要なのは、「全員が出勤できる」「電話が必ず通じる」といった前提を置かないことです。
例えば職員が3人しか出勤できない日を想定し、誰が利用者情報を見るか、誰が連絡を担うかを決めます。
紙に書いて壁へ掲示するだけでも、初動の迷いは減らせます。
介護・医療にはBCPに関する対応が求められる場面があります。
しかし、書式を埋めることだけを目的にすると、日々の運営から離れます。
自事業所で起こり得る停止要因を一つ選び、当日の動きを確認することが、防災BCP見直しの第一歩です。
9月中に見直す範囲は、完璧でなくて構いません。
まずは連絡先、優先業務、代替手段の3点を更新し、10月以降に訓練で確かめます。
BCPの制度要件や訓練頻度、報告の扱いはサービス種別によって異なるため、指定権者や関係機関の最新案内を確認してください。
災害時も介護記録と患者情報を確認する方法

災害時に最初に困りやすいのは、利用者・患者の重要情報をすぐ見つけられないことです。
記録の防災対策は、全記録を複製することではなく、初動に必要な情報を別経路で確認できるようにすることです。
電子記録を使っている事業所でも、停電、通信障害、端末故障が同時に起こる可能性があります。
一方で、紙だけに頼ると、保管場所の浸水や持ち出し忘れが課題になります。
小規模事業所では、電子と紙の役割を分ける方法が取り組みやすいです。
例えば、日々の詳細記録は普段のシステムに残し、緊急時に必要な情報だけを定期的に更新した一覧へまとめます。
一覧に入れる内容は、職種やサービスに応じて必要最小限にします。
個人情報を扱うため、保管場所、閲覧者、持ち出し方法も同時に決めてください。
- 氏名、住所、緊急連絡先、主な連絡順位
- 服薬、アレルギー、医療的ケア、移動支援などの注意事項
- 主治医、訪問看護、居宅介護支援事業所、連携医療機関の連絡先
- 送迎、訪問、診療予約など、その日に止められない予定
- 個別避難で配慮が必要な事項と、対応できる職員の情報
この一覧は、月に一度すべてを作り直す必要はありません。
入退所、担当変更、連絡先変更が発生した時点で更新する担当を決めます。
更新日を確認する欄を設けると、古い情報が残っていることに気付きやすくなります。
クラウドサービスは、インターネットにつながる環境があれば情報を確認しやすい手段です。
ただし、導入だけで安全性が確保されるわけではありません。
端末の認証方法、権限設定、退職者アカウントの停止、通信障害時の代替策を運用ルールにします。
AIによる記録要約を使う場合も、緊急連絡先や医療情報の最終確認は必ず職員が行います。
紙の緊急一覧は、施錠できる保管場所に置きます。
防水性のあるケースへ入れ、誰が持ち出すかを決める方法もあります。
「情報がある」状態ではなく、「停電した現場で担当者が3分以内に見られる」状態を目標にすると、記録対策の優先順位が明確になります。
個人情報の取扱いは、事業所の規程や関係法令に沿って検討してください。
外部サービスの利用条件やデータ保管場所も含め、必要に応じて専門家へ確認することが大切です。
人員配置が崩れた時の優先業務と連絡網の作り方

災害時の人員配置では、通常シフトを再現しようとしないことが重要です。
職員数が減った時の基準は、業務を均等に分けることではなく、安全に止められない業務へ人を集めることです。
介護事業所では、職員自身も被災し、出勤が難しくなる可能性があります。
クリニックや歯科医院でも、交通事情や家庭の事情によって勤務が不安定になります。
そのため、「誰でも来られる前提」の連絡網ではなく、出勤可否を短時間で集約できる仕組みが必要です。
連絡先一覧を配るだけでは、情報が管理者へ集中します。
小規模事業所ほど、正副の連絡担当を置き、担当不在でも動く形にします。
連絡手段は電話だけに絞らず、普段から使っている業務用チャット、メール、連絡アプリなどを組み合わせます。
ただし、緊急時に新しいアプリを初めて使う設計は避けるべきです。
- 第1連絡は職員の安全確認と出勤可否だけを尋ねる
- 第2連絡は利用者・患者・家族への案内を担当別に分ける
- 第3連絡は連携先や取引先へ必要な支援と営業状況を伝える
- 連絡不能者は一定時間後に再確認し、代替担当へ引き継ぐ
- 管理者不在時の最終判断者を役職ではなく氏名で決める
業務の優先順位も、職員が判断できる言葉で書きます。
例えば「全利用者への通常サービスを維持する」ではなく、「医療的ケア、食事、排せつ、安否確認を優先し、レクリエーションや定例会議は中止する」と記します。
通所介護なら、送迎中止の判断時刻と家族への連絡担当を決めておくと混乱を抑えやすくなります。
クリニックでは、予約患者への案内と、診療中の患者の安全確保を分けて考えます。
歯科医院では、診療ユニットや滅菌機器の停止後に確認する手順も必要です。
医療機関としての対応範囲は設備や地域連携で異なるため、地域の関係機関との役割分担を平時に確認します。
連絡網は、全員に一斉送信できることより、返信がない人を把握し、次の対応へ進めることが実務上重要です。
月例会議の最後に5分だけ安否確認を試せば、電話番号の変更や操作の不慣れも確認できます。
介護施設・クリニックの備蓄を現場で使える形にする

備蓄は、購入品の数を増やすほど強くなるわけではありません。
介護・医療の備蓄は、誰に何が必要か、どこにあり、誰が取り出すかまで決めて初めて機能します。
秋は年末年始の休業や冬季の配送遅延も見据え、保管品を棚卸しするよい時期です。
最初に確認したいのは、非常食や飲料水だけではありません。
介護事業所なら、手袋、衛生用品、排せつケア用品、簡易トイレ、照明、モバイル電源などが候補になります。
クリニックや歯科医院では、診療に必要な消耗品、衛生管理用品、停電時に安全停止する機器の確認も必要です。
ただし、必要量を一律に決めるのは難しいものです。
利用者・患者数、職員数、建物の立地、近隣の支援体制、在宅サービスの比率によって変わります。
まずは「普段の発注が止まった場合、何日間に何が不足するか」を現場担当者と洗い出します。
- 毎日使う消耗品を、利用者・患者の特性別に書き出す
- 冷蔵や電源が必要な物品を分け、停電時の対応を確認する
- 期限がある食品や衛生用品に、点検月と担当者を割り当てる
- 備蓄場所を一か所に集めず、浸水や施錠のリスクを考えて分散する
- 発災時に持ち出す物品を箱やケース単位で決め、訓練で運ぶ
棚卸しでは、現場職員に「この棚から暗い場所でも取れるか」と尋ねることが有効です。
管理者だけが場所を知っている備蓄は、夜勤や休日に機能しません。
また、保管のために通常業務の動線をふさぐと、日常的に使われなくなります。
取り出しやすさと安全な保管を両立させる位置を検討してください。
備蓄品の購入や設備投資に補助金を検討する場合は、対象経費、申請時期、事前着手の可否が制度ごとに異なります。
補助金ありきで急いで発注せず、まず自事業所の優先順位を決めます。
制度の詳細は、最新の公募要領で必ず確認してください。
備蓄の点検は、防災担当者の仕事に閉じず、普段使う職員が実物を手に取る場にすると改善点が見つかります。
月次の在庫確認へ一項目を加えるだけでも、継続しやすくなります。
10月から始める防災訓練と下期の改善計画

防災BCPを現場へ定着させるには、年に一度の避難訓練だけでは足りません。
小規模事業所の防災訓練は、10分で終わる一場面の確認を毎月重ねる方法が続きやすいです。
9月に計画を見直したら、10月から下期の会議や朝礼へ小さく組み込みます。
最初の訓練は、地震や豪雨の細かな想定を作り込まなくても構いません。
「平日の午後に停電し、電話がつながりにくい」という一場面だけを置きます。
そして、管理者、現場職員、事務担当者がそれぞれ最初に何をするかを口頭で確認します。
実際に記録一覧、照明、連絡手段を取り出すところまで行うと、机上の見落としが分かります。
下期の改善計画は、大きなシステム導入と日常の運用改善を分けて管理します。
例えば連絡先の更新、備蓄点検、緊急一覧の保管場所変更は、費用をかけずに進められます。
一方で、記録システムの見直し、非常用電源、通信環境の整備は、予算と補助制度の確認を含めて検討します。
- 10月は安否確認と職員参集の連絡訓練を10分で実施する
- 11月は停電を想定し、重要記録と照明を取り出す訓練を行う
- 12月は年末年始の少人数体制で優先業務を再確認する
- 1月は訓練で止まった作業を一つ選び、手順書を修正する
- 2月以降は地域連携先や家族連絡の流れを見直して次年度へつなぐ
訓練後には、反省会を長く開く必要はありません。
「迷ったこと」「足りなかったもの」「担当が重なったこと」を一人一つ出し、改善担当と期限を決めます。
改善事項は3件までに絞ると、日常業務のなかでも進めやすくなります。
AIやチャットツールは、訓練記録の要約、手順書のたたき台、連絡文面の作成に活用できます。
ただし、個人情報や診療情報を入力する際は、利用するサービスの設定と社内ルールを必ず確認してください。
AIが作った文章をそのまま使わず、現場責任者が実態に合わせて確認することも欠かせません。
防災BCPの完成形は計画書ではなく、急な欠勤や停電が起きても職員が迷わず動ける日常の運営です。
今週は連絡網、来週は緊急記録というように、一項目ずつ進めれば下期のうちに土台を整えられます。
よくある質問
Q. 介護事業所の防災BCPは何から始めればよいですか?
最初は、災害発生後の最初の60分に行う行動を決めることから始めます。
利用者の安全確認、職員の安否確認、緊急連絡先の確認、優先業務の判断者をA4一枚にまとめます。
計画書を先に作り込むより、現場で確認できる初動手順を整える方が進めやすいです。
Q. 電子介護記録だけで災害時の情報管理はできますか?
電子介護記録だけに依存しない運用が現実的です。
停電や通信障害に備え、緊急時に必要な利用者情報を最小限に絞った一覧を、適切な管理のもとで別経路でも確認できるようにします。
個人情報の保管場所、閲覧権限、更新担当もあわせて決めてください。
Q. 職員が出勤できない時の介護サービスはどう決めますか?
職員が減った場合は、通常業務を維持するのではなく、止められないケアへ人員を集中させます。
医療的ケア、安否確認、食事、排せつなどを優先し、延期できる会議や行事は中止します。
サービス種別の基準や地域との連携方法は、最新の関係機関の案内も確認してください。
Q. クリニックや歯科医院でも防災BCPは必要ですか?
クリニックや歯科医院でも、診療中の安全確保と患者への連絡を想定した防災BCPが必要です。
停電時の機器停止、予約患者への案内、薬剤や衛生用品の保全、職員の参集方法を整理します。
設備や診療内容により必要な対応は異なるため、地域の連携先とも確認します。
Q. 防災BCPの訓練はどのくらいの頻度で行うべきですか?
防災BCPの訓練は、短時間でも定期的に行う方法が有効です。
安否確認、緊急連絡、記録閲覧、備蓄の取り出しを月替わりで試すと、通常業務への負担を抑えられます。
求められる訓練の扱いや頻度はサービス種別で異なるため、最新の制度案内を確認してください。
中小企業が明日から取り組めること
- 管理者、現場責任者、事務担当者で30分集まり、災害時に止められない業務を5件以内で書き出します。
- 職員連絡網を更新し、電話以外に使う連絡手段と、管理者不在時の代行者を氏名で決めます。
- 利用者・患者の緊急情報を確認し、停電時でも見られる保管方法と更新担当を一人決めます。
- 備蓄棚を現場職員と点検し、期限切れ、取り出しにくい物品、不足品を写真なしの一覧に残します。
- 次回の朝礼で10分だけ時間を取り、停電時に誰が何をするかを口頭で確認する訓練を行います。
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この記事を書いた人
吉田 光広 / 代表取締役CEO ストラテジーデザイン株式会社
1997年からITの最前線に立ち、ゲーム開発を経てWeb・システム開発の会社経営を20年以上継続。 現在はAIコンサルタントとして上場企業への講師登壇や高校生向けAI教育を担当し、 ITプロ育成スクール「PROCLASS」代表も兼務。中小企業のAI・DX導入を現場で支援している。
著書:泥臭いAI ― リアルビジネスをAIでハックする/AIを雇う技術 ― 100人の天才を部下にする仕事術/AI×教育の実践ガイド ― 問いを立てる力を育てる