【小売業】【在庫管理】小売業のABC分析|在庫と仕入れを年末商戦前に整える方法
こんにちは、ストラテジーデザインの吉田です。
今日の記事は、小売業がABC分析を使い、限られた仕入れ資金を売れる商品へ振り向ける方法を解説します。
小売店では、売れている商品も動かない商品も、同じ棚や同じ発注ルールで扱われがちです。
その結果、主力商品の欠品と、動きの遅い商品の滞留が同時に起こります。
仕入れ資金が限られる中小小売店ほど、この状態は利益と資金繰りに影響します。
10月は、最低賃金改定後の人件費を見直しながら、年末商戦の仕入れを具体化する時期です。
全商品の見直しから始める必要はありません。
ABC分析で商品を3段階に分け、管理方法を変えることで、少人数でも仕入れと在庫の判断を整えられます。
この記事の要点
ABC分析とは、売上や粗利への貢献度に応じて商品をA・B・Cに分類し、管理の濃さを変える手法のことです。小売業では、商品ごとの仕入れ量、発注頻度、販促の優先順位を決めるために使います。
- 小売業のABC分析は、売上または粗利への貢献度で商品を分け、限られた仕入れ資金の配分を決めるための実務的な手法です。
- A商品は欠品防止を優先し、C商品は一律の補充をやめることで、在庫を増やさず販売機会を守りやすくなります。
- 年末商戦の仕入れでは、前年実績だけでなく直近の販売速度と在庫日数を確認して発注量を決める必要があります。
- 店舗とECを併用する小売店は、販売チャネル別ではなく商品単位で在庫を見える化すると、売り逃しと過剰在庫を減らしやすくなります。
小売業のABC分析とは何か、在庫管理にどう使うか

小売業のABC分析は、全商品を平等に管理しないための方法です。
商品ごとに管理の濃さを変えることが、ABC分析の目的です。
一般には、一定期間の売上高または粗利額を大きい順に並べます。
その累計構成比を見て、商品をA・B・Cに分類します。
区分の比率には目安がありますが、業種や品ぞろえによって変わります。
大切なのは、分類の数字そのものではありません。
中小小売店では、まず直近3か月から6か月の販売実績で始めるとよいでしょう。
季節商品の比率が高い店は、前年同時期の実績も併せて確認します。
分類に使う数字は、POSレジやECカートの販売データ、なければ販売記録から集計できます。
- A商品:売上または粗利への貢献が大きく、欠品すると機会損失が大きい商品
- B商品:安定して売れるが、A商品ほど優先度は高くない商品
- C商品:販売頻度や金額が低く、在庫を持ちすぎやすい商品
売上高で分類すると、集客力のある商品を見つけやすくなります。
一方、粗利額で分類すると、利益を支える商品を把握できます。
例えば、高額でも粗利が薄い商品と、単価は低くても利益が残る商品では、扱い方が変わります。
そのため、最初は売上高でABC分析を行い、A商品だけ粗利額も確認する方法が現実的です。
経営者と店長が毎月確認する商品数を、全商品から上位の商品群へ絞れます。
ただし、C商品を直ちに廃番にする必要はありません。
専門店では、品ぞろえ自体が来店理由になる場合があります。
C商品は「定番在庫として持つもの」「受注後に取り寄せるもの」「販売を終えるもの」に分けて判断します。
ABC分析は商品を切り捨てる表ではなく、商品ごとに異なる判断基準を持つための表です。
ABC分析の進め方|小さな店でも作れる商品一覧表

ABC分析は、高価な在庫管理システムがなくても始められます。
最初の分析は、商品名・販売数・売上高・粗利額の4項目があれば十分です。
対象期間を決めたら、商品別の販売実績を一覧にします。
色やサイズで販売傾向が大きく異なる場合は、可能ならSKU単位で見ます。
SKUとは、色やサイズまで区別した最小の商品管理単位のことです。
ただし、作業負荷が大きい場合は、まず商品シリーズ単位でも構いません。
集計表は、表計算ソフトで作れます。
POSレジやECの管理画面からデータを出せる場合は、それを利用します。
販売履歴が紙中心の場合は、主力商品から先に記録を始め、すべてを一度に遡らない方法が続きます。
- 商品名または商品コードを販売実績の大きい順に並べる
- 各商品の売上高を合計し、全体売上に占める構成比を計算する
- 上から順に構成比を足し、累計構成比を確認する
- 累計構成比が高い商品群をA、次をB、残りをCとして仮置きする
- A商品について、現在庫、発注残、仕入れ先、粗利率を追記する
A・B・Cの境界は、売上構成の偏りを見ながら決めます。
典型的な比率をそのまま当てはめるより、自店の商品数と販売の偏りに合う区切りを選ぶことが重要です。
上位数商品で売上の大半を占める店なら、A商品を少数に絞る方が運用しやすくなります。
分析結果は、月に一度更新するだけでも役に立ちます。
食品や消耗品のように販売変動が早い店では、週次でA商品の在庫だけ確認してもよいでしょう。
逆に家具や高額専門品のように販売周期が長い店は、月次を基本に商談や予約の状況を加味します。
担当者を増やしすぎないこともポイントです。
データを出す人、判断する人、発注する人を明確にします。
小規模店では、店長が判断し、事務担当または販売担当が更新する形が現実的です。
分析表を作ることではなく、発注判断に使うことがゴールです。
A・B・C商品別に変える発注量と在庫の持ち方

ABC分析の価値は、分類後に発注ルールを変えて初めて生まれます。
A商品には欠品防止、C商品には在庫抑制という別のルールを置くことが基本です。
A商品は、来店客が目的買いする定番品や、ECで繰り返し注文される商品になりやすいです。
欠品すると、売上だけでなく店への信頼にも影響します。
発注点とは、在庫がこの数量を下回ったら発注するという基準です。
A商品には、発注点を明確に設定します。
- A商品は、販売速度と仕入れ先の納期を確認し、発注点を商品ごとに決める
- A商品は、店舗在庫とEC在庫を合算して確認し、二重発注を防ぐ
- B商品は、月次または隔週で販売数を確認し、定数補充を基本にする
- C商品は、追加発注前に直近の販売日を見て、在庫理由を確認する
- 季節商品は、期末の値下げやセット販売の方針を仕入れ時点で決める
発注点は複雑な計算から始めなくて構いません。
例えば、1週間に平均して何個売れるか、仕入れ先から届くまで何日かかるかを確認します。
その販売見込みに、想定外の売れ行きに備える少量を加えれば、最初の基準になります。
C商品については、仕入れ先との条件交渉も検討できます。
小ロット発注、受注後の取り寄せ、委託販売、返品条件の確認などです。
すべてが使えるわけではありませんが、通常在庫にしない選択肢を増やせます。
また、ABC分類は固定ではありません。
SNSで紹介されて急に売れる商品や、季節の変化で動く商品もあります。
新商品は実績が少ないため、A・B・Cに無理に入れず、「導入テスト品」として別管理にする方法が有効です。
販売期間と初回仕入れ量を決め、結果を見て定番化を判断します。
在庫を減らすことだけを目的にすると、売れる商品まで薄くなります。
目指すべきは在庫総額の削減ではなく、売れる商品に必要な在庫を残した状態で資金の滞留を減らすことです。
店舗とEC併用店でABC分析を仕入れに生かす方法

店舗とECを併用する場合、在庫をチャネルごとに別々に考えすぎると判断が遅れます。
店舗とECの販売実績を商品単位で合わせると、仕入れの優先順位を判断しやすくなります。
店舗では売れないのにECでは動く商品、店舗で手に取られることで売れる商品があります。
まずは、販売チャネル別の実績を残しながら、合計売上でABC分類を行います。
その上でA商品だけ、店舗とECの内訳を確認します。
例えば、ECで売上が伸びるA商品は、商品ページの在庫表示と補充の連携が重要です。
実店舗で販売した直後にEC上では在庫があるように見えると、注文後の欠品連絡が発生します。
リアルタイム連携が難しい場合でも、A商品に限って朝夕に在庫を更新する運用から始められます。
- A商品は、店舗・EC・予約分を一つの在庫表で確認する
- ECで売れるA商品は、梱包資材と出荷担当の作業時間も事前に確保する
- 店舗で売れるA商品は、売場の目立つ位置と補充担当を決める
- B商品は、EC限定セットや関連商品の提案で販売機会を増やす
- C商品は、EC掲載を続けるか、受注販売へ切り替えるかを検討する
ABC分析は、客単価の改善にも使えます。
A商品に関連するB商品を見つけると、セット提案やレジ前の提案を作りやすくなります。
関連商品は、感覚だけで決めず、同じ注文や同じ会計で買われた履歴を参考にします。
人件費の見直しが必要な10月は、作業の優先順位も確認したい時期です。
すべての商品を同じ頻度で棚卸ししたり、同じ深さで商品説明を更新したりする必要はありません。
A商品の欠品確認、商品ページの整備、売場補充を先に行う方が、少人数でも成果につながりやすくなります。
ただし、ECを始めたばかりの店は、掲載数を増やすことが先決な場合もあります。
その場合でも、売れた商品を毎月ABC分析に戻す仕組みを作ります。
ECの在庫管理は、商品数を増やすほど、売れる商品の管理を細かくする必要があります。
年末商戦前に始めるABC分析の実務スケジュール

年末商戦に向けた仕入れは、売場づくりより先に商品別の優先順位を決める必要があります。
10月のABC分析は、年末に売る商品と持ちすぎない商品を分ける準備になります。
まず、直近の販売実績を集計し、前年の年末期に動いた商品を確認します。
ただし、前年の数量をそのまま発注量にするのは慎重に行います。
仕入れ価格、販売価格、客層、競合状況、ECの比率は変化するためです。
直近の販売速度と現在庫を見て、発注判断を補正します。
年末商戦は、通常期より来店や注文が増える可能性があります。
一方で、追加発注が間に合わない商品もあります。
仕入れ先ごとの納期、最小発注量、欠品時の代替品をA商品から確認しましょう。
決めるべきことを少数の商品に絞れば、経営者の判断負担も抑えられます。
- 10月前半に、直近3か月から6か月の売上でABC分析を行う
- 10月中に、A商品の前年実績、現在庫、納期、粗利額を一覧で確認する
- 11月前に、A商品の発注点と代替商品の候補を決める
- 年末向けのB商品は、セット販売やギフト提案の対象を絞る
- C商品は、追加仕入れを止める候補と処分方針を責任者が決める
この運用を続けると、翌年は季節ごとの仕入れ判断がしやすくなります。
年末商戦後には、予想と実績の差を商品別に振り返ります。
A商品が欠品した理由、B商品が想定より売れた理由、C商品の在庫が残った理由を短く記録します。
改善は、毎回の分析表を完璧にすることではありません。
発注ルールを一つ変え、その結果を確認することです。
例えば、最初の3か月はA商品10品だけを対象にしても十分です。
仕入れ担当、販売担当、EC担当が同じ表を見る習慣を作ることが、次の改善につながります。
在庫と仕入れは、経営者だけの仕事ではありません。
現場の販売感覚と数字を結びつけることで、判断の精度は上がります。
中小小売店のABC分析は、商品数を管理する仕組みではなく、限られた資金と人員を主力商品へ配分する経営の仕組みです。
よくある質問
Q. 小売業のABC分析は何か月分のデータで行うべきですか?
まずは直近3か月から6か月分で行うのが現実的です。
季節商品の多い店は、前年同時期の実績も補助的に確認してください。
販売周期が長い高額商品は、月ごとの数字だけで判断せず、予約や見積もりの状況も加味します。
Q. ABC分析でC商品はすべて廃番にするべきですか?
C商品をすべて廃番にする必要はありません。
専門店では、品ぞろえとして必要な商品もあるためです。
定番として少量を持つ商品、受注後に取り寄せる商品、販売終了する商品に分けて、在庫を持つ理由を明確にしてください。
Q. POSレジがなくてもABC分析はできますか?
POSレジがなくてもABC分析はできます。
まずは主力商品から、商品名、販売数、販売金額、仕入れ額を表計算ソフトに記録します。
全商品を遡って集計するより、今月から記録を始めて毎月更新する方が継続しやすいです。
Q. 店舗とECの在庫は分けて管理した方がよいですか?
物理的な保管場所が違っても、商品別の合計在庫は一元的に確認するべきです。
その上で、店舗用、EC用、予約分の内訳を持つと判断しやすくなります。
特にA商品は、販売後の在庫更新を優先し、欠品連絡を減らす運用を整えます。
Q. ABC分析は売上高と粗利額のどちらで行うべきですか?
最初は売上高で分類し、A商品だけ粗利額も確認する方法がおすすめです。
売上高は販売機会の大きい商品を見つけやすく、粗利額は利益を支える商品を見つけやすい指標です。
両方を一度に複雑に管理するより、段階的に使う方が定着します。
中小企業が明日から取り組めること
- 直近3か月の販売実績から、売上上位20商品だけを抽出し、販売金額の大きい順に並べます。
- 上位商品の現在庫と次回入荷予定日を確認し、欠品すると困る商品を10品以内に絞ります。
- 動きの遅い商品を10品選び、通常在庫、受注販売、販売終了のどれにするか仮決めします。
- 店舗とECで同じ商品を売る場合は、A商品の在庫を朝夕に確認する担当者と時刻を決めます。
- 月末に30分の振り返り時間を設け、欠品した商品と売れ残った商品の理由を一行で記録します。
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この記事を書いた人
吉田 光広 / 代表取締役CEO ストラテジーデザイン株式会社
1997年からITの最前線に立ち、ゲーム開発を経てWeb・システム開発の会社経営を20年以上継続。 現在はAIコンサルタントとして上場企業への講師登壇や高校生向けAI教育を担当し、 ITプロ育成スクール「PROCLASS」代表も兼務。中小企業のAI・DX導入を現場で支援している。
著書:泥臭いAI ― リアルビジネスをAIでハックする/AIを雇う技術 ― 100人の天才を部下にする仕事術/AI×教育の実践ガイド ― 問いを立てる力を育てる