【物流】【制約理論】中小運送会社の制約理論|繁忙期の配車と人員を整える方法
こんにちは、ストラテジーデザインの吉田です。
今日の記事は、中小運送会社が制約理論を使い、年末繁忙期の配車・人員・荷主対応を無理なく整える方法を解説する記事です。
年末商戦が近づくと、急な増便、時間指定、持ち込み依頼が重なります。
配車担当者が毎日調整していても、車両不足なのか、ドライバー不足なのか、荷待ちなのかが曖昧なままでは、現場の負担だけが増えます。
このような時に役立つのが制約理論です。
大きなシステム投資を前提にせず、最も詰まる工程を見つけ、そこを基準に配車と受注を整えます。
この記事では、中小運送・倉庫会社が年末繁忙期と来期計画に使える形へ落とし込みます。
この記事の要点
制約理論とは、会社全体の成果を最も妨げている一つの制約に集中して改善する経営の考え方です。物流では、車両、ドライバー、荷待ち時間、積み降ろし場所などが制約になり得ます。
- 中小運送会社の配車改善は、全工程を均等に急がせるのではなく、最も詰まる制約を一つ特定することから始めます。
- ドライバー不足への対応は採用だけではなく、荷待ちや空車回送を減らして一人当たりの運行可能時間を守ることが重要です。
- 繁忙期の受注判断は、売上額ではなく制約となる車両・人員の時間をどれだけ使うかで優先順位を決めます。
- 制約を改善した後は、次に詰まる場所へ管理の焦点を移すことで、無理な残業に頼らない運行体制をつくれます。
物流の制約理論とは|配車の詰まりを一つに絞る考え方

制約理論は、全員にもっと頑張ってもらうための方法ではありません。
会社全体の流れを止めている場所を見つけ、そこに経営資源を集中するための考え方です。
中小運送会社の改善は、最も詰まる一工程を基準に組み立てると判断しやすくなります。
車両が余っていても、乗務できる人が足りなければ配送量は増えません。
逆にドライバーがいても、荷主先での荷待ちが長ければ、追加の仕事を受ける余力は生まれません。
物流の制約は、日によって動くことがあります。
普段は配車担当者の調整時間でも、月末や年末は積み降ろし場所の混雑が制約になる場合があります。
そのため、一般論で決めつけず、自社の一週間を見て確かめることが必要です。
まず、配車表、点呼記録、運行日報など、既にある情報を使って候補を洗い出します。
新しい管理表を増やす前に、現場が把握している「待ち」を見えるようにします。
- 朝の出庫が予定より遅れる便と、その理由を五営業日分記録する
- 荷主先で三十分以上待った便を、発着地別に抜き出す
- 配車変更が発生した時刻と、変更理由を一行で残す
- 帰り便が取れず、空車回送になった区間を地図上で確認する
- 特定のドライバーしか対応できない業務を洗い出す
例えば、午前中の積み込み待ちが毎日発生するなら、車両台数を増やしても根本解決にはなりません。
出庫順の変更、積み込み予約の依頼、前日積みの可否などを先に検討する方が合理的です。
一方で、制約が見つかったからといって、その担当者を責める必要はありません。
配車担当者が不在だと判断が止まるなら、問題は個人の能力よりも判断手順が属人化している点にあります。
制約理論は、人ではなく仕事の流れを対象にします。
年末のように物量が読みづらい時期は、制約候補を毎日変える必要はありません。
まずは一週間単位で最も多く失われた時間を確認します。
その一点を整えるだけでも、受注判断と人員配置の基準がそろいやすくなります。
運送会社のボトルネックを見つける5日間の確認手順

ボトルネックとは、全体の仕事量を決めてしまう最も処理能力が低い場所のことです。
物流では、見た目に忙しい場所ではなく、次の工程を待たせている場所がボトルネックになります。
ボトルネックは感覚で決めず、五日間の待ち時間と配車変更の記録で見つけます。
中小企業では、詳細な運行管理システムがなくても始められます。
配車担当、運行管理者、ドライバーが同じ分類で記録することがポイントです。
記録項目は多くしすぎないでください。
「何時から何時まで」「何を待ったか」「その結果どうなったか」の三点で十分です。
紙、共有表、スマートフォンの入力フォームなど、現場が続けられる方法を選びます。
- 一日目は、全便の出庫予定時刻と実際の出庫時刻の差を記録する
- 二日目は、荷待ち、荷役待ち、検品待ちを分けて記録する
- 三日目は、配車変更と応援依頼の発生理由を記録する
- 四日目は、空車回送と帰り便なしの区間を記録する
- 五日目は、残業や拘束時間が長くなった便の原因を確認する
五日分が集まったら、回数と時間の両方で並べます。
回数が多くても短時間なら、まずは長時間の待ちを優先します。
逆に一回当たりは短くても、全便で起きている作業なら、合計時間が大きくなることがあります。
確認する時は、配車担当だけで判断しないことも大切です。
ドライバーには「一番困る荷主」を聞くのではなく、「次の行動ができずに待った場面」を聞きます。
言葉を変えると、感情論ではなく改善できる事実が集まりやすくなります。
倉庫を併設している会社なら、入庫、検品、ピッキング、積み込みのどこで車両が待つかも見ます。
倉庫の作業効率だけを上げても、出荷締切に間に合わなければ運送側の制約は残ります。
運送と倉庫を別々に見ず、一つの受注から納品までで考えます。
この記録は、荷主との運賃や荷待ち時間の協議にも使えます。
ただし、最初から交渉材料にするのではなく、自社の運行を安定させるために事実をつかむことが先です。
事実がそろえば、どの依頼を断るか、どの便を優先するかも説明しやすくなります。
配車と人員配置は制約を止めない順番で決める

制約が分かった後に重要なのは、その場所を止めないことです。
制約以外の工程を急がせても、全体の配送量や利益は大きく変わりません。
むしろ、制約に仕事が集中した時に混乱が増えることがあります。
配車の優先順位は、売上の大きさだけでなく制約となる時間を失わせない順に決めます。
例えば、特定の時間帯にしか積み込めない荷主が制約なら、その時間帯を埋める便を先に確定します。
その後に、時間の融通が利く便やスポット便を組みます。
ドライバー不足の会社では、全員の稼働率を限界まで高めようとしがちです。
しかし、遅延や欠勤への対応余力がなくなると、制約である便が止まりやすくなります。
短い待機時間は無駄に見えても、重要便を守る余力になる場合があります。
- 制約便の出庫時刻、積み込み時刻、納品時刻を前日に確定する
- 制約便には、荷主先の手順に慣れた担当者を優先して割り当てる
- 車両故障や欠勤時に代替できる車両と担当者を一組決めておく
- 時間指定が緩い便は、制約便の後に配車する基準を共有する
- 繁忙期だけ外部委託する便を、利益と品質の条件であらかじめ決める
ここで注意したいのは、制約便に優秀な人だけを固定し続けないことです。
固定が長引くと、他の人が対応できず、新しい制約をつくります。
横乗り、荷主先ルールの動画化、引き継ぎメモなどで、対応可能な人を二人以上に増やします。
また、配車担当者の作業そのものが制約なら、判断を減らす工夫が有効です。
毎朝ゼロから組み替えるのではなく、定期便の基本形、欠勤時の代替順、協力会社へ依頼する条件を決めます。
判断基準を一枚にまとめれば、担当者の不在時にも運行を維持しやすくなります。
年末繁忙期は、急な依頼を全て受けることが得策とは限りません。
制約を止める依頼を受ければ、既存荷主への品質も崩れます。
受ける条件と断る条件を事前に決め、営業と配車で共有してください。
これは機会を逃さないためではなく、約束した配送を守るための管理です。
運賃交渉と共同配送に制約理論をどう使うか

制約理論は、社内の作業改善だけに使うものではありません。
荷主との運賃交渉や、近隣事業者との共同配送を考える時にも、何が限られた資源なのかを整理する軸になります。
運賃交渉では、値上げのお願いより先に、制約時間を増やす条件を具体的に示すことが有効です。
例えば、荷待ち、附帯作業、細かな時間指定、再配達により、車両とドライバーがどれだけ拘束されるかを便単位で確認します。
感覚的な負担ではなく、運行に与える影響として話せます。
ただし、荷主に一方的な変更を求めても合意にはつながりません。
荷主側の出荷都合や繁忙期の事情を聞き、代替案を複数用意します。
時間帯をずらす、前日までに物量を共有する、荷役を分担するなど、双方の制約を減らす選択肢を検討します。
- 待機、荷役、検品、再配達を通常運賃に含めるか整理する
- 時間指定の幅を広げられる荷主を、個別に確認する
- 物量確定の締切時刻を決め、直前変更の扱いを協議する
- 帰り便に合う荷主を、配送エリアと時間帯で探す
- 共同配送では、積み込み場所、責任分界、連絡方法を事前に決める
共同配送は、空車回送を減らせる可能性があります。
一方で、集荷時刻のずれや積載条件の違いが、新たな制約になることもあります。
最初から広域・多社で始めず、同じエリア、近い温度帯、似た納品条件など、合わせやすい案件から試す方が管理しやすいです。
試行する場合は、一つの荷主、一つの曜日、一つのエリアに絞ります。
評価するのは売上だけではありません。
配車変更回数、荷待ち、ドライバーの拘束時間、連絡回数を確認します。
結果がよければ対象を広げ、問題があれば条件を見直します。
運賃や取引条件の改定には、契約内容や関連制度の確認が必要です。
個別の契約と最新の公募要領、行政機関の案内などを必ず確認してください。
中小企業向けの業務改善や設備導入に関する支援制度を検討する場合も、対象要件を事前に確認することが重要です。
運賃交渉の数字づくりには、車両一台・一日単位の採算把握も役立ちます。
制約時間を改善しても、便ごとの収支が見えなければ、受注の優先順位を誤る可能性があります。
年末繁忙期から来期計画へ制約改善を定着させる

年末繁忙期の目的は、全ての依頼を受けることではありません。
安全と既存荷主へのサービスを守りながら、自社が安定して運べる量と条件を把握することです。
その経験は、来期の採用、車両、協力会社、設備の計画につながります。
繁忙期の制約記録は、来期計画を現場の実態からつくるための基礎資料になります。
経営会議で「人が足りない」と話すだけでは、何人をどの業務に配置すべきか決まりません。
どの曜日、時間帯、エリア、荷主条件で制約が起きたかを整理します。
まず、年内は毎日十分な分析をしようとせず、短時間の確認を続けます。
配車終了後や翌朝の始業前に、関係者が十分程度で前日の制約を共有する形でも構いません。
責任追及の場にしないことが継続の条件です。
- 毎日、最も大きかった待ち時間を一件だけ共有する
- 毎週、制約便が予定どおり動いた割合を振り返る
- 月末に、断った依頼と断った理由を分類する
- 年始に、採用、教育、車両、協力会社の課題を分けて整理する
- 来期の重点テーマを一つに絞り、担当者と確認日を決める
来期の計画では、改善案を「すぐやること」「試すこと」「投資判断が必要なこと」に分けます。
すぐやることには、配車ルールの標準化や荷主への時間確認があります。
試すことには、小さな共同配送や積み込み順の変更があります。
投資判断が必要なことには、運行管理システム、庫内機器、車両更新などがあります。
AIや配車システムの活用も、この順番で考えると失敗しにくくなります。
先に制約を定義せずにシステムを入れると、情報入力の仕事だけが増える場合があります。
例えば荷待ちが制約なら、待機理由を簡単に蓄積し、荷主・時間帯別に確認できる仕組みから始めます。
年末調整や人員手配で管理部門が忙しい時期でも、制約の確認は小さく始められます。
五日間の記録から最も大きい詰まりを一つ選び、年内に一つだけ手を打ってください。
改善の結果を年始に振り返れば、現場の納得を得ながら次の投資や交渉の優先順位を決められます。
よくある質問
Q. 中小運送会社でも制約理論は使えますか?
はい、車両や拠点が少ない中小運送会社ほど使いやすい考え方です。
大規模な分析は不要で、五日間だけ出庫遅れ、荷待ち、配車変更の理由を記録します。
最も時間を失っている一つの工程を見つけ、そこを止めない配車ルールから始めてください。
Q. 物流のボトルネックは何を見れば分かりますか?
まずは待ち時間と配車変更の発生理由を見ると分かります。
車両不足だけでなく、荷待ち、積み込み、検品、配車担当者の判断、特定ドライバーへの依存が原因の場合があります。
忙しそうな場所ではなく、次の作業を待たせている場所を探してください。
Q. ドライバー不足でも配車を改善できますか?
はい、採用前でも改善できる余地はあります。
荷待ち、空車回送、直前の配車変更を減らせば、限られたドライバーの時間を重要便へ振り向けやすくなります。
ただし、拘束時間や安全を犠牲にした運行は避け、代替要員を含めた余力を残してください。
Q. 繁忙期のスポット便は受けるべきですか?
既存の重要便を止めない条件なら受ける判断ができます。
スポット便の売上だけで決めず、どの車両、ドライバー、時間帯を使うかを確認してください。
制約となる時間を長く使い、既存便の遅延を招く依頼は、条件変更や協力会社活用も含めて検討します。
Q. 共同配送はどのように小さく始めればよいですか?
一社、一エリア、一曜日に絞って試す方法が現実的です。
納品時間、積載条件、連絡方法、事故や遅延時の責任分担を事前に確認します。
空車回送が減ったかだけでなく、待機時間や配車変更が増えていないかを見て、継続の可否を判断してください。
中小企業が明日から取り組めること
- 配車表に出庫予定と実績の差を追記し、遅れた便の理由を五営業日だけ記録します。
- ドライバーへ次の作業ができずに待った場面を聞き、荷待ちと荷役待ちを分けて集計します。
- 繁忙期に絶対に遅らせない便を三つまで選び、前日までに車両と担当者を確定します。
- 急なスポット便を受ける条件を、使用車両、時間帯、協力会社の可否で一枚にまとめます。
- 週末に十分間だけ振り返り、最も時間を失った一件に対する改善策を一つ決めます。
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この記事を書いた人
吉田 光広 / 代表取締役CEO ストラテジーデザイン株式会社
1997年からITの最前線に立ち、ゲーム開発を経てWeb・システム開発の会社経営を20年以上継続。 現在はAIコンサルタントとして上場企業への講師登壇や高校生向けAI教育を担当し、 ITプロ育成スクール「PROCLASS」代表も兼務。中小企業のAI・DX導入を現場で支援している。
著書:泥臭いAI ― リアルビジネスをAIでハックする/AIを雇う技術 ― 100人の天才を部下にする仕事術/AI×教育の実践ガイド ― 問いを立てる力を育てる