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AI — 2026.08.28

【IT業】【単価向上】IT企業のお盆明け実務|9月の単価交渉とAI提案準備

こんにちは、ストラテジーデザインの吉田です。
今日の記事は、お盆明けの稼働差を活かし、中小IT企業が9月以降の単価交渉とAI活用提案を準備する実務を解説します。

お盆休みの前後は、顧客先の会議や開発案件が一時的に落ち着くことがあります。
一方で、9月以降の予算、契約更新、採用計画を考え始める顧客も少なくありません。

受託開発や保守を担う中小IT企業にとって、この時期の空き工数は単なる待機時間ではありません。
案件ごとの利益を確認し、顧客に出す提案を整えるための経営資源です。

この記事では、9月の商談で使える単価交渉の根拠、AI活用提案の作り方、担当者任せにしない管理方法を具体的に解説します。

この記事の要点

単価交渉の準備とは、価格を上げるお願いをする前に、提供価値・工数・顧客への効果を整理し、選べる契約案として提示できる状態にすることです。

  • 中小IT企業の単価交渉は、値上げの通知ではなく、顧客課題に応じた契約内容の再設計として進めると合意を得やすくなります。
  • お盆明けの空き工数は、案件の採算確認、顧客別の提案準備、社内のAI利用ルール整備に優先して使うべきです。
  • AI活用提案は、全社システム刷新ではなく、問い合わせ分類や文書検索など一業務の検証から始めると進めやすくなります。
  • 9月に契約更新予定と顧客予算の時期を把握しておくと、年末直前の急な条件変更を減らしやすくなります。

お盆明けのIT企業が最初に確認する案件採算

お盆明けのIT企業が最初に確認する案件採算

お盆明けに最初に確認すべきなのは、売上の合計ではなく、案件別に残る利益です。
稼働が落ち着いた時期なら、現場責任者と営業担当が同じ数字を見ながら確認できます。

IT企業の単価交渉は、赤字案件を特定することから始まります。
赤字の原因が単価なのか、仕様変更なのか、手戻りなのかで、打つ手は変わります。
すべてを値上げで解決しようとしないことが重要です。

まず、継続中の案件を一覧にして、最低限の情報をそろえてください。
会計ソフトだけでは分からない実作業の時間も、現場から集めます。

例えば、月額保守が一定額でも、問い合わせ件数が増え、休日対応まで発生しているなら、問題は単純な月額の低さではありません。
対応時間、対象範囲、受付時間が契約に合っていない可能性があります。
この場合は、追加費用だけでなく、問い合わせ窓口や対応区分の設計も必要です。

受託開発でも同様です。
見積もり工数と実績工数の差が大きい案件は、技術者の能力だけで判断しません。
要件定義の粒度、顧客の決裁速度、レビュー回数、他社システムとの連携などを見ます。
原因を分けると、次の見積もりで入れるべき条件が明確になります。

確認する案件は、全件でなくても構いません。
まずは売上規模が大きい案件、担当者の負荷が高い案件、半年以内に更新がある案件を10件程度選んでください。
小さな会社ほど、主要案件の採算が全体利益を左右します。

この棚卸しでは、責任者を責めない運用も必要です。
実績時間を正しく出すと評価が下がる雰囲気があると、数字は使えません。
経営者は「次の契約をよくするために確認する」と目的を伝え、事実を集める場にしてください。

9月の単価交渉で伝えるべき価値と契約条件

9月の単価交渉で伝えるべき価値と契約条件

単価交渉で顧客に伝えるべきなのは、自社の人件費事情だけではありません。
顧客が継続して受け取る価値と、その価値を保つための契約条件を具体的に示します。

単価交渉は、価格だけを変える話ではなく、提供範囲を顧客と合意し直す話です。
この視点があると、交渉は一方的な値上げ要請になりにくくなります。

説明資料は、凝った提案書である必要はありません。
顧客ごとにA4で2〜3枚程度の内容を用意し、口頭で補足できる状態にします。
最初から正式見積書を送るより、更新の相談として打ち合わせを設定する方が進めやすい場合もあります。

たとえば保守契約なら、「月額を上げたい」だけでは判断材料が不足します。
「通常問い合わせは翌営業日までに回答する」「月次で障害傾向を報告する」「改善提案の時間を月に一定量確保する」といった内容に変換します。
顧客は費用とともに、何が変わるかを比較できます。

受託開発では、見積書の前提条件を明確にします。
画面数、レビュー回数、データ移行の範囲、他社との調整担当、検収条件などです。
特に曖昧になりやすい項目は、見積書の末尾ではなく、商談でも確認してください。

交渉の時期も重要です。
契約満了の直前に提示すると、顧客は選択肢を持てません。
更新月の2〜3か月前を目安に、予算編成の時期を担当者へ確認します。
9月は下半期の施策を具体化する企業もあるため、相談を始める時期として活用しやすいでしょう。

価格改定に合意が得られない場合もあります。
その際は、無償対応を続けるのではなく、対応範囲の縮小、受付時間の変更、追加作業の個別見積もりを選択肢にします。
利益と関係性の両方を守るには、できないことを契約上明確にする必要があります。

AI活用提案を顧客案件へ小さく組み込む方法

AI活用提案を顧客案件へ小さく組み込む方法

AI活用を提案するときは、大きな構想から始めない方が安全です。
顧客の業務にある繰り返し作業を一つ選び、効果と運用上の注意を確認する小規模な検証から始めます。

中小IT企業のAI提案は、一業務を短期間で検証できる範囲に絞るのが定石です。
受託開発会社は、顧客の現場を理解している強みを使えます。
既存システムの全面改修を前提にする必要はありません。

生成AIとは、文章、画像、要約、分類などを新たに作るAIのことです。
便利な一方で、事実と異なる回答を出すことや、入力情報の管理が課題になるため、人による確認と利用ルールが欠かせません。

提案候補は、入力と出力が比較的はっきりしている業務から探します。
顧客の担当者に「毎週または毎日、繰り返している作業は何か」と聞くと、テーマを見つけやすくなります。

提案時には、AIが判断を代替するという言い方を避けてください。
「下書き作成を補助する」「検索時間を短くする」「分類の候補を示す」といった役割にします。
最終確認を誰が担うかも、最初から決めます。

検証計画には、対象業務、対象人数、期間、入力してよい情報、確認担当者、評価方法を入れます。
評価方法は、作業時間だけに限定しません。
誤分類の件数、担当者の修正負担、回答品質、顧客情報の扱いも確認します。

特に顧客情報や個人情報を扱う場合は、利用するAIサービスの設定、学習利用の条件、アクセス権限を確認してください。
契約や業界ごとのルールも関係します。
技術担当だけで決めず、顧客側の責任者を含めて運用を合意することが大切です。

AI提案は、新規売上の機会になる一方で、既存保守の価値を説明し直す機会にもなります。
導入後のデータ整備、権限管理、運用改善まで支援できる範囲を整理し、自社が継続して提供できるサービスにしてください。

空き工数を採用と提案資産に変える社内運用

空き工数を採用と提案資産に変える社内運用

お盆明けに案件が少し落ち着くと、空き工数を営業や採用に回したいと考える経営者は多いでしょう。
ただし、担当者へ「空いた時間で何か考えて」と任せるだけでは、成果物が残りにくくなります。

空き工数は、期限・担当・完成形を決めた社内投資に変えることで価値が残ります。
開発案件と同じように、小さなプロジェクトとして管理してください。

優先順位は、自社の課題によって変わります。
新規案件が不足しているなら提案資産を優先し、採用が難しいならオンボーディングを整えます。
オンボーディングとは、新しく入社した人が早く業務に慣れるための受け入れ設計のことです。

この作業は、技術者だけに偏らせないことも大切です。
営業は顧客が使う言葉を持ち、保守担当は現場の困りごとを知り、開発者は実現条件を理解しています。
週30分でも共有の場を設けると、提案内容が現実的になります。

完成形を決める例としては、「製造業向けの保守改善提案を3枚にまとめる」「要件定義の質問を20項目に絞る」「新人が半日で環境構築できる手順にする」があります。
作業時間ではなく、次の商談や採用で使える成果物で管理します。

また、AIを使って資料のたたき台や議事録の整理を行う場合も、社内ルールを設けます。
顧客名、ソースコード、契約内容などを入力してよいかは、情報区分ごとに判断します。
便利さを優先して情報管理を曖昧にしないことが、顧客から信頼される基盤になります。

人材採用では、採用広報だけを先に強化しない方がよい場合があります。
入社後にどの案件で、誰が、どのように育てるかが整理されていなければ、採用しても定着しにくくなります。
空き工数を使い、仕事の見える化と育成手順の整備を進めてください。

9月から年末までの単価交渉を進める90日計画

9月から年末までの単価交渉を進める90日計画

お盆明けの棚卸しを、一度の会議で終わらせないことが重要です。
9月から年末までを90日程度の区切りで考え、案件確認、顧客提案、社内改善を順番に進めます。

下半期の単価向上は、案件別の事実確認、顧客との事前相談、契約条件の更新を分けて進めると実行しやすくなります。
経営者が毎週すべての案件を見る必要はありませんが、判断すべき案件を見失わない仕組みは必要です。

最初の30日間は、採算と更新時期の把握に集中します。
この段階で顧客に価格だけを伝える必要はありません。
担当者との定例会で、次期予算、体制変更、業務課題を聞き、提案の前提をそろえます。

経営会議では、売上見込みだけでなく、更新交渉の進捗を確認します。
見る項目は多くしすぎず、「更新対象件数」「提案済み件数」「条件合意件数」「赤字または低採算案件数」程度から始めます。
数字の定義を毎月変えないことが大切です。

交渉が進まない案件は、顧客側に余裕がない、決裁者が違う、提案の目的が不明確といった理由があります。
担当営業の努力不足と決めつけず、次の行動を具体化してください。
決裁者との面談設定、運用実績の提示、契約満了後の選択肢整理などが考えられます。

AI活用の検証を始める場合も、年末までに本格導入を急ぐ必要はありません。
検証で分かった対象業務、必要なデータ、運用責任者を整理できれば、翌期の提案精度が上がります。
小さく試し、契約できるサービスへ育てる姿勢が現実的です。

必要に応じて、IT導入や業務改善に関係する補助金の活用を検討する方法もあります。
ただし、対象経費、申請時期、事前着手の扱いは制度ごとに異なります。
活用を前提に契約を急がず、最新の公募要領で必ず確認してください。

お盆明けの数週間に整えた情報は、年末の更新交渉だけでなく、来期の採用、開発投資、顧客別の営業方針にも使えます。
まずは主要10案件の確認から始め、自社の利益をつくる仕事へ時間を振り向けましょう。

よくある質問

Q. IT企業の単価交渉はいつ始めるべきですか?

単価交渉は、契約更新の2〜3か月前から始めるのが基本です。
更新直前では顧客の予算や社内調整の時間が足りません。
お盆明けに更新月を一覧化し、9月から次期の課題を聞く面談を設定すると進めやすくなります。

Q. 保守契約の値上げをどう説明すればよいですか?

保守契約の値上げは、対応範囲と提供価値を見直す提案として説明します。
無償作業の増加だけを伝えるのではなく、受付時間、対応速度、定例報告、改善提案などを整理し、現行維持を含む複数案で提示してください。

Q. 中小IT企業はAI提案を何から始めるべきですか?

中小IT企業のAI提案は、顧客の繰り返し業務を一つ選ぶことから始めます。
文書検索、問い合わせ分類、議事録要約など、入力と確認者が明確な業務が候補です。
顧客情報の扱いと最終確認の責任者を先に決めましょう。

Q. 案件別の採算管理はどこまで細かく必要ですか?

案件別の採算管理は、まず主要案件の予定工数と実績工数を比べるだけで十分です。
すべてを精密に管理しようとすると続きません。
売上が大きい案件、更新が近い案件、負荷が高い案件から始め、原因を記録してください。

Q. 空き工数を営業活動に使う際の注意点は何ですか?

空き工数を営業活動に使うなら、完成させる成果物を先に決めることが重要です。
提案書、要件確認リスト、導入事例、新人教育手順など、次の案件で再利用できる形にします。
担当者、期限、確認者も決めて小さく管理します。

中小企業が明日から取り組めること

  • 契約更新が半年以内の主要10案件を選び、顧客名、更新月、月額、担当者を一枚の一覧にまとめます。
  • 各案件について、直近3か月の予定工数と実績工数、無償対応の内容を担当者と30分で確認します。
  • 更新対象の顧客へ、次期予算と業務課題を聞くための定例面談を9月中に設定します。
  • 顧客の反復業務を一つ選び、AIで補助できる作業、確認者、扱う情報を一枚に整理します。
  • 空き工数で作る成果物を一つ決め、担当者と期限を置いて翌月の商談または採用で使います。

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この記事を書いた人

吉田 光広 / 代表取締役CEO ストラテジーデザイン株式会社

1997年からITの最前線に立ち、ゲーム開発を経てWeb・システム開発の会社経営を20年以上継続。 現在はAIコンサルタントとして上場企業への講師登壇や高校生向けAI教育を担当し、 ITプロ育成スクール「PROCLASS」代表も兼務。中小企業のAI・DX導入を現場で支援している。

著書:泥臭いAI ― リアルビジネスをAIでハックする/AIを雇う技術 ― 100人の天才を部下にする仕事術/AI×教育の実践ガイド ― 問いを立てる力を育てる

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