SNS運用は“コンセプトの再現”が9割

コミュニティがブランドを育てる時代の戦略

運用ノウハウの前に「軸」がなければ伸びない理由**

SNS運用について相談を受けると、多くの企業が最初に気にするのは
「投稿頻度はどれくらいがいいのか」
「リールと写真、どちらが伸びますか?」
「ハッシュタグって重要ですか?」
といった“運用テクニック”の部分です。

 

もちろん、これらも必要です。
しかし実際のところ、SNSの成否を決めているのは テクニックではなくコンセプト です。

 

言い換えれば、
SNS運用とは、ブランドコンセプトを日々の投稿で“再現し続ける”作業にすぎない。

だからこそ、SNS運用の9割は“コンセプト次第”で決まります。

■ SNSが伸びない企業に共通する「たった一つの欠落」

SNSがうまくいかない企業に共通する原因は、実はとてもシンプルです。

コンセプトが存在しない、もしくは曖昧であること。

コンセプトが曖昧な企業では、投稿内容がこうなります

 

・美味しそうな写真 → でも何が特徴かわからない

・価格を伝える投稿 → コンセプトと関係ない

・スタッフ紹介 → 投稿理由が不明

・とにかく投稿するだけ → 世界観に統一性がない

 

これではフォロワーは増えませんし、増えたとしても定着しません。

SNSは“伝えるメディア”である以前に、
世界観を見せるメディア だからです。

■ コンセプトとは「ブランドの翻訳装置」

ブランドコンセプトとは何か?
それは、マーケティング用語ではなく 「世界観を言語化した指針」 のことです。

例えば…

✔ きな粉スイーツブランド

→「日本の素材を、日常の贅沢に変える」

✔ ペットフードブランド

→「家族の健康を守る、未来のごはん」

✔ ジュエリーブランド

→「想いをかたちにして、毎日に小さな光を」

このように“存在理由をひとことで表したもの”がコンセプト。

そしてSNS運用とは、
毎日の投稿でこのコンセプトを少しずつ再現していく行為
です。

だから“コンセプトが弱いブランドは、SNSも弱い”。

■ SNS運用の9割は「再現」

SNSにおける「再現」とは、以下のようなものです。


● ① 投稿トーンの再現

・文章のテンション

・絵文字の使い方

・写真の構図

・色味、光、余白

これらがバラバラのアカウントは絶対に伸びません。


● ② 価値提供の再現

コンセプトが
「日常に贅沢を」なら、
投稿は“贅沢さ”を感じるものでなければならない。

 

「健康」なら、
情報の正確性や安心感が求められる。

 

これが“価値の再現”。


● ③ ターゲット世界の再現

投稿はターゲットのライフスタイルとつながっているべき。

・20代女性なら →「共感」

・30代女性なら →「余白のある上品な表現」

・子育て世代なら →「安心・簡便性」

SNSはターゲットの生活そのものを映す鏡です。


● ④ 写真・動画の“世界観”の再現

写真のクオリティはブランド価値に直結します。

・影の入り方

・物撮りの背景

・カラーの統一

・余白の使い方

SNSでは、この“映像美の再現”が生命線です。


● ⑤ 投稿理由(意図)の再現

SNS運用は「綺麗な写真を上げること」とは全く違います。

・その投稿で何を伝えたいのか

・どんな感情を届けたいのか

・ブランドのどの側面を見せたいのか

目的を“再現”してこそ、アカウントに一貫性が生まれます。

■ コンセプトの強いアカウントは「運用がブレない」

SNSが伸びる理由は、
派手な動画を使っているからでも、頻度が多いからでもありません。

世界観がブレないからです。

逆にいえば、
コンセプトが強いだけでSNS運用は半分以上成功しています。

毎回 “何を投稿するか迷う” 企業は、
実はコンセプトが定まっていないケースがほとんどです。

■ では、良いコンセプトとは何か?

SNS運用で強いコンセプトには、共通点があります。

✔ ① 誰に向けたブランドなのかが明確

ターゲットは「年齢」ではなく「価値観」で定義する。

✔ ② “ブランドの存在理由” が伝わる

単なるキャッチコピーではなく、なぜこのブランドが必要なのか。

✔ ③ 投稿テーマに落とし込みやすい

SNS用に分解すると、以下のような投稿カテゴリが自然に生まれる。

・世界観投稿

・商品・サービス投稿

・ストーリー投稿

・原料・技術投稿

・Before / After

・お客様の声

・スタッフ紹介(世界観に合う形で)

コンセプトは、
SNS投稿の設計図
そのものと言える。

■ 実例:大手事業でも「再現の精度」で差が出る

実際の現場では、
投稿内容ではなく「再現の精度」が、アカウントの伸びを左右しています。

■ SNS運用改善の最初の一歩は「投稿」ではなく“言語化”

よくある誤解として、

「運用改善=投稿改善」
と思われがちですが、実際は違います。

改善の最初の一歩は、
ブランドコンセプトの再定義と言語化です。

言語化ができれば、SNSの9割は自動的に整います。

■ まとめ:SNSは「発信」ではなく“翻訳”

SNS運用で必ず押さえるべき本質はひとつ。

SNSとは、ブランドをわかりやすく翻訳する場所。
ブランドコンセプトを毎日再現し続ける場所。

だからこそ、

・いい写真

・動画編集

・ハッシュタグ

・高い更新頻度

これらは“最後に必要なもの”であり、根幹ではありません。

SNS運用は、
コンセプトの再現率が上がった瞬間から、一気に伸び始める。

 

次回は、
【SNSで売れるブランドと売れないブランドの決定的な差】
をテーマに深掘りします。

北川 聡

ブランディング・事業戦略コンサルタント

Strategy-Design株式会社

大学卒業後、不動産投資会社にて事業分析と投資スキーム構築に携わる。その後、家業である和菓子店に戻り、オンライン通販会社を立ち上げ、ECを軸にした新しい販売モデルを構築。家業を継承後は、和洋菓子ブランド 「吉祥菓寮」 を創設し、事業規模を約20倍・国内9店舗へと成長させるブランドへ育て上げた。

事業売却後は、自身が培ってきたブランド構築・事業運営・組織づくりの経験をもとに、IT領域に強みを持つ吉田との出会いをきっかけに ストラテジーデザイン株式会社 に参画。以降、ブランディング・事業戦略・海外展開支援の分野で、
「日本から世界へ繋がるブランドをつくる」 をテーマに、企業や商品の発展に尽力している。