SNS時代のブランドは“ユーザー出演型”で成長する

コミュニティがブランドを育てる時代の戦略

SNSが主役となった現代、ブランドの成長ルールは大きく変わりました。
かつては、企業が発信する広告やコピーがブランド価値を形づくりましたが、
今は ユーザー自身の投稿・感想・体験 がブランドを語り、広げ、育てていきます。

つまり、
ブランドはユーザーが出演して成長していく時代に突入した
ということです。

本稿では、企業主体のブランド構築が通用しなくなった理由と、
SNSで勝つブランドが採用している “ユーザー出演型” の戦略について解説します。


 

「企業が語るブランド」は信じられなくなった

SNS普及以前は、

・広告

・パンフレット

・会社の理念

・店頭デザイン
など、“企業の言葉” がブランドそのものでした。

 

しかし今、ユーザーは企業の言葉よりも
「他のユーザーのリアルな声」
を信頼するようになりました。

 

・Google口コミ

・Instagramのタグ投稿

・Xの感想

・TikTokの体験レビュー

・YouTubeの紹介動画

 

これらの「第三者の声」が、企業の発する情報より圧倒的に影響力を持っています。

つまり、
企業が必死に「私たちはこういうブランドです」と伝えても、
ユーザーがそう感じていなければブランドは成立しない

のです。

これからのブランドは “ユーザー出演型” に変わる

では、現代で成長するブランドはどんな構造か?

結論は一つです。


ユーザーが主役になり、ブランドは「舞台」を提供する存在になる。


企業が語るのではなく、
ユーザー自身の投稿・来店・体験・レビューによって、
ブランド価値が広がっていく。

これは単なる「UGC(ユーザー生成コンテンツ)」の話ではありません。
もっと本質的には、

ブランドの世界観を“ユーザーが表現できる場”を作ることがカギになる
ということです。

SNS時代に強いブランドの特徴は「演じやすさ」

SNSで伸びるブランドには明確な共通点があります。

それは——
ユーザーがブランドの世界観の一部になりやすい
ということ。


具体的には次のような特徴があります。


● ①「撮りたくなる場所」がある

ただの店舗ではなく、

・サインウォール

・影が綺麗に落ちる壁

・シンボルアイコン

・世界観を象徴するパーツ
など、世界観と一貫した“撮影スポット”が必ず存在する。


● ② 商品が“映える”ように設計されている

味・価格以上に、

・色

・形

・ライティング

・手元ショットのしやすさ

・シーンを作れること

これらが「ユーザーが撮りたい」を生む。


● ③ 世界観が統一されており、真似しやすい

ブランドのトーンが明確なため、
「このブランドっぽい投稿」という型が存在する。

その型があるから、ユーザーは再現しやすい。


● ④ SNSの“語られ方”を企業が決めすぎない

あえて余白を残し、
ユーザーが自由に創造・表現できる構造をつくる。

ブランドは「ステージ」、ユーザーは「演者」

これまでのブランド戦略は
企業が主役で、ユーザーが受動的
という構造でした。

しかしSNS時代は真逆。

・主役:ユーザー

・脚本:ブランドが提供する世界観

・舞台:店舗、商品、SNS企画

・観客:フォロワー、コミュニティ

ブランドは“劇場の運営者”のような存在になります。

ユーザーがステージに立ち、演じ、表現し、その様子が広がるほど、
ブランドの影響力は強くなっていきます。

では何から始めればいいのか?

ユーザー出演型ブランドをつくるためには、
以下の3つから取り組むのが最も効果的です。


① SNSでの「理想の語られ方」を定義する

これは「どんな投稿が増えるとブランドが強くなるか」を決める作業です。

例:

・手元に映る商品が象徴的

・世界観が感じられる構図

・友人との写真が欠かせない

・文章よりも“体験”で語られる

この方向性を決めると、
ユーザーの投稿はどんどん統一されていきます。


② “撮りたくなるスポット”を設計する

具体的には、

・ブランドロゴの使い方

・壁面の色と素材

・商品を置く台のデザイン

・格子・影・光の入り方

・看板の形

・カトラリーの世界観

これらをSNS視点で設計すると、投稿数は劇的に増えます。


③ コミュニティ設計を行う

フォロワーの“参加感”がブランド成長を加速させます。

・ユーザー投稿を企業側が紹介する

・ストーリーで顧客の体験を共有する

・ブランド公式が「お客様の声」を世界観に合わせて紹介する

・タグ投稿を育てていく

・常連ユーザーを“アンバサダー”へ育成する

ユーザーが出演する仕組みが整うと、
ブランドは企業の広告より強く育っていきます。

まとめ:SNSの主人公はブランドではなく“ユーザー”である

今、最も強く成長しているブランドは、
企業が主役ではありません。

ユーザーひとりひとりが、ブランドを表現し拡散する主役になっている。

企業はそのための“舞台”を整えるだけ。
そしてそのステージの完成度こそが、
ブランド成長のスピードを決めていきます。

次回予告

第5回は
「コンセプトが弱いSNS運用は9割が失敗する」
というテーマで、ブランド設計とSNS運用の関係を掘り下げます。

北川 聡

ブランディング・事業戦略コンサルタント

Strategy-Design株式会社

大学卒業後、不動産投資会社にて事業分析と投資スキーム構築に携わる。その後、家業である和菓子店に戻り、オンライン通販会社を立ち上げ、ECを軸にした新しい販売モデルを構築。家業を継承後は、和洋菓子ブランド 「吉祥菓寮」 を創設し、事業規模を約20倍・国内9店舗へと成長させるブランドへ育て上げた。

事業売却後は、自身が培ってきたブランド構築・事業運営・組織づくりの経験をもとに、IT領域に強みを持つ吉田との出会いをきっかけに ストラテジーデザイン株式会社 に参画。以降、ブランディング・事業戦略・海外展開支援の分野で、
「日本から世界へ繋がるブランドをつくる」 をテーマに、企業や商品の発展に尽力している。