HOME / ブログ / 既存ブランドの立て直しに必要なのは“削ぎ落とし” 2025.11.24 BRANDING SNS運用ブランディング 既存ブランドの立て直しに必要なのは“削ぎ落とし” 成熟したブランドを再成長させるための構造改革メソッド 既存ブランドの再生は、新規事業以上に難易度が高いテーマです。なぜなら、すでに「積み上げられた過去」があるから。歴史、顧客、スタッフ、商品ラインナップ、社内文化、店舗デザイン、広告の癖……成熟したブランドには、多くの“蓄積”が存在します。しかし、ブランドが伸び悩むとき、原因の大半は 「積み上げすぎたもの」 にあります。 結論からいうと、既存ブランドの立て直しで最も必要なのは“何を足すか” ではなく “何を削るか”です。 ブランドは「足し算」で崩れ、「引き算」で立ち上がる ブランドが衰退していくプロセスには、必ず共通点があります。 ● ① 商品が増えすぎる売上を伸ばすために新商品を作り続け、結果として「何のブランドなのか」が曖昧になる。● ② メッセージが増えすぎる広告、SNS、店頭POP……すべてが違うことを伝え始める。● ③ 顧客の定義が広がりすぎる「誰でもOKなブランド」は、最終的に誰からも選ばれない。● ④ 世界観がブレるデザインが複数ありすぎて、ブランドとしてのアイデンティティが薄れていく。 衰退期のブランドは例外なく、足し算の結果、情報が濁ってしまっている のです。 削ぎ落としの目的は “ブランドの純度を取り戻すこと” ブランドは「尖っているほど選ばれやすい」。逆に“丸くなる”と、どれだけ広告費を使っても反応率は上がりません。 だからこそ既存ブランドはまず、純度を取り戻すための“引き算”から着手するべき なのです。 削ぎ落としの3ステップ 立て直しの現場で、私が必ず行うプロセスは次の3つです。ステップ①:ブランドの“核”を再定義するまず行うのは、「このブランドは何のために存在するのか?」という原点を見つめ直す作業です。 すべてのブランドは、誕生時に“核”があります。 ・創業者が何にこだわったか・他社と決定的に違う点は何か・顧客が実際に評価している価値は何か・最も売れる商品・売れる理由は何か これらを深掘りすると、ブランドの本質(=これだけは絶対に捨ててはいけない価値)が必ず見えてきます。ブランドの立て直しは、この“核”を取り戻すところから始まります。ステップ②:ブランドの雑音を排除する(徹底的な引き算)ここからが削ぎ落としのフェーズです。具体的には以下のものを削ります。 ・伝わらないキャッチコピー・売れない商品・顧客から評価されていないサービス・世界観を乱すデザイン・写真・SNSでの無駄な投稿内容・組織内で浸透していない理念・使われていないマーケティング施策 削る基準はただ一つ。「再定義した核の価値に貢献しているか?」この基準だけで、ブランドは一気に純度を取り戻します。ステップ③:世界観を再構築し、発信を統一する核の価値が明確になり、余計なものが削ぎ落とされると、ブランドは驚くほどクリアに見えてきます。ここで初めて、 ・デザイン・商品ラインナップ・SNSのトーン・店舗の内装・接客マニュアル・代表メッセージ すべてを“一つの言葉”に揃える。すると、ブランドは一貫性を持ち、ファンが自然と戻り始めます。 ケース:和洋菓子ブランド「吉祥菓寮」の立て直しで起きた変化 私自身が関わった事例として、きな粉に特化した和洋菓子ブランド「吉祥菓寮」があります。立ち上げ当時、和・洋・スイーツ・ギフトなど多方向の魅力が混ざり合っていました。そこで徹底的に削ぎ、“きな粉の魅力を最大化する”という核に絞ったことで、・商品開発の軸が明確に・SNSの反応が急激に向上・世界観が統一され店舗の雰囲気まで変化・来店目的が明確になり、ファンが急増・9店舗まで全国展開へ ブランドの立て直しは、「何かを増やしたこと」が成功の理由ではありません。逆に、余計なものを削り、“核”だけを残したことが勝因だったのです。 まとめ:削ぎ落とすと、ブランドは強くなる ブランドが成長しない理由は「足りないから」ではなく「多すぎるから」であることが大半です。 だからこそ、既存ブランドを再生する際には足す前に、必ず削ぐ。削ぎ落とすことで、・発信の一貫性が生まれる・顧客が選びやすくなる・社内が動きやすくなる・デザインが洗練される・SNSが伸びる・“ブランドらしさ”が蘇る ブランドは、引き算で強くなるのです。 次回は、「既存ブランドの立て直しに必要なのは“削ぎ落とし”」をテーマに深掘りしていきます。 次回予告 第4回は、「SNSが伸びない本当の理由は“コンセプトが曖昧だから”」をテーマに掘り下げます。 SNS運用はテクニックの問題ではなく、ブランドの問題です。次回も実例とともに、深くご紹介します。 北川 聡ブランディング・事業戦略コンサルタントStrategy-Design株式会社大学卒業後、不動産投資会社にて事業分析と投資スキーム構築に携わる。その後、家業である和菓子店に戻り、オンライン通販会社を立ち上げ、ECを軸にした新しい販売モデルを構築。家業を継承後は、和洋菓子ブランド 「吉祥菓寮」 を創設し、事業規模を約20倍・国内9店舗へと成長させるブランドへ育て上げた。事業売却後は、自身が培ってきたブランド構築・事業運営・組織づくりの経験をもとに、IT領域に強みを持つ吉田との出会いをきっかけに ストラテジーデザイン株式会社 に参画。以降、ブランディング・事業戦略・海外展開支援の分野で、「日本から世界へ繋がるブランドをつくる」 をテーマに、企業や商品の発展に尽力している。 PREVIOUS BACK TO LIST BACK TO LIST NEXT