お盆の稼働差を利益改善につなげる運送会社の8月実務
お盆前後は、荷主によって物量の動きが大きく異なります。
製造業の出荷が止まる一方で、小売、食品、通販関連では配送需要が続く場合もあります。
普段どおりの配車では、空車や待機時間が増えやすい時期です。
8月は、現場の負荷を抑えながら下半期の利益構造を見直せる時期でもあります。
この記事では、お盆の稼働差を把握し、配車、共同配送、燃料費、運賃交渉につなげる具体的な手順を紹介します。
お盆前後の物量を荷主別に予測する

お盆の対策は、全社の稼働率を見るだけでは足りません。
まず荷主ごとに、休業日、出荷の締切日、休み前の前倒し出荷、休み明けの集中出荷を分けて確認します。
担当者の記憶だけに頼らず、前年の配車表や運行記録を使うと、物量が動く日を具体的に絞れます。
確認は、8月だけで終わらせないことが大切です。
休日前後の波は、月末や9月初旬の配車にも影響します。
荷主別に「通常」「増える可能性」「減る可能性」の三段階で印を付け、確定情報と見込み情報を分けて管理してください。
- 荷主の担当者へ、休業日と出荷締切日を電話またはメールで確認する
- 7月下旬から9月上旬までの配車を並べ、前倒し便と集中便を色分けする
- 物量未確定の荷主には、回答予定日を決めて再確認する
この一覧は、複雑なシステムがなくても表計算ソフトで作れます。
大切なのは、配車担当者だけが持つ情報にしないことです。
運行管理者、営業担当、倉庫責任者が同じ一覧を見れば、急な依頼への対応可否を早く判断できます。
特に注意したいのは、休み前の増便を通常の売上として捉えることです。
増便の裏で待機、横持ち、応援車両が増えていれば、利益は想定より残りません。
便数だけでなく、走行距離、待機時間、傭車費も併せて記録し、繁忙日の採算を一便単位で確認する準備を進めましょう。
空車と待機を減らす配車の組み替え方

物量予測ができたら、次は車両と人員を固定観念から外して見直します。
担当荷主ごとに車両を固定すると、休業中の荷主が出た際に空車が生まれやすくなります。
お盆前後は、通常よりも車両を荷主横断で配分する余地がある時期です。
最初に、全車両を「確定便」「見込み便」「空き時間あり」に分けます。
そのうえで、集荷地や納品地が近い便、時間帯がつながる便を探します。
無理な積み合わせは事故や遅延の原因になるため、積載条件、荷役時間、ドライバーの拘束時間を必ず確認してください。
- 午前に空く車両と午後に増える便を、地域ごとに一枚へ集約する
- 同じ方向へ向かう複数荷主の便は、荷姿と納品条件を確認して候補化する
- 休み前の応援依頼は、傭車を決める前に自社車両の空き時間を確認する
共同配送とは、複数の荷主の荷物をまとめて配送する方法です。
いきなり複数社で新たな仕組みを作る必要はありません。
まずは既存の協力会社と、同じエリアへ向かう片道便の情報を週に一度共有するところから始められます。
ただし、共同配送は「空いているから積む」だけでは続きません。
荷待ちが長い納品先、検品が厳しい荷主、時間指定が細かい荷物を混ぜると、全体の効率が下がります。
お盆の運行結果を使って、組み合わせた便と単独便の差を比べてください。
再現できる組み合わせだけを標準化することが、下半期の配車改善につながります。
燃料費と傭車費を便別に見える化する

お盆期の配車変更では、売上の増減だけで判断しないことが重要です。
短期間に増える臨時便は、燃料費、高速道路料金、傭車費、待機時間が重なりやすいためです。
月次の損益だけでは原因が見えにくいため、便ごとの収入と変動費を並べるところから始めます。
変動費とは、運行量に応じて増減する費用です。
運送会社では、燃料費、通行料、傭車費などが該当します。
すべてを厳密に計算できなくても、まずは売上、走行距離、燃料使用量または燃料費、通行料、傭車の有無を一つの記録に残せば十分です。
- 8月の臨時便には、通常便と区別できる運行区分を付ける
- 傭車を使った便は、荷主へ請求した金額と支払額を同じ行に記録する
- 荷待ちが発生した便は、到着時刻と出発時刻を残して原因を分類する
記録の目的は、ドライバーや配車担当者を評価することではありません。
どの荷主、どの地域、どの時間帯でコストが増えるかをつかみ、次回の条件調整に使うことです。
入力項目を増やしすぎると現場に定着しないため、最初は五項目程度に絞るとよいでしょう。
AIは、文章で残った運行メモを分類したり、待機理由を集計したりする補助に使えます。
ただし、元となる時刻や費用の記録が不正確なら、分析結果も不正確になります。
まずは現場が無理なく入力できる形を決め、数字と現場の事情をセットで残す運用を整えてください。
8月の実績を運賃交渉と下半期計画へ使う

お盆前後の実績は、荷主との運賃や配送条件を話し合う材料になります。
値上げを一方的に求めるのではなく、臨時便、待機、時間指定、積み下ろし条件によって必要な対応が変わることを共有します。
感覚的な説明よりも、実際に発生した運行の事実を示すほうが会話を進めやすくなります。
交渉の対象は、基本運賃だけではありません。
たとえば、休日前の集中出荷は早めの発注締切を設ける、長い待機が発生する納品先は受付時間を調整する、急な追加便は別条件にする、といった選択肢があります。
荷主にとっても出荷の確実性を保てる提案にすると、話し合いの目的が共有しやすくなります。
- 8月中に、臨時便と待機が多かった荷主を三社程度に絞る
- 各荷主ごとに、発生した事実、困った条件、改善案を一枚にまとめる
- 9月の訪問またはオンライン面談の日程を、営業担当が先に打診する
下半期計画では、ドライバーの採用や車両増車の前に、既存便の条件改善で吸収できる範囲を確認しましょう。
便の組み替え、発注締切、納品時間、共同配送の候補を整理すれば、投資の優先順位も見えやすくなります。
人手不足への対応を、採用だけに限定しないことが大切です。
改善案を実行する際は、対象荷主を一社か二社に絞って試します。
結果を見てから対象を広げれば、現場の混乱を抑えられます。
制度を利用してシステム導入や設備投資を検討する場合は、対象経費や申請時期が変わることがあるため、最新の公募要領で必ず確認してください。
8月の記録を、下半期の交渉と投資判断の土台にしましょう。
中小企業が明日から取り組めること
- 荷主ごとの休業日、出荷締切日、物量の見込みを一枚の表に集約します。
- 8月の臨時便に運行区分を付け、通常便と収入・費用を分けて記録します。
- 空き車両が出る時間帯を地域別に確認し、既存の協力会社へ共有します。
- 待機が長かった便を三件選び、到着から出発までの時間と理由を残します。
- お盆明けに話す荷主を三社選び、配送条件の改善案を一枚にまとめます。
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